三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)が脱退してからわずか二週間で、野村ホールディングスが2025年3月12日に*1 、そして三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)も3月19日に銀行の投融資活動における温室効果ガス削減を促す国際的イニシアチブであるネット・ゼロ・バンキング・アライアンス(NZBA)から脱退をする方向で調整していることが明らかとなり、日本の銀行の脱退が相次ぐ形となった。 *2
NZBAとは?
NZBA(ネット・ゼロ・バンキング・アライアンス)は、国連環境計画・金融イニシアチブ(UNEP FI)が主導する国際的な枠組みであり、銀行が2050年までに金融活動に関連する温室効果ガス排出量をネットゼロ(実質ゼロ)にすることを誓約するものだ。日本からは5行が2021年に加盟し、現在、約130の金融機関が加盟している。*3
加盟銀行は、以下のような基準に従う必要がある。
- 2050年までに融資・投資ポートフォリオの排出量をネットゼロにする
- 2030年までの中間目標を設定し、進捗を公開する
- 地球温暖化を1.5℃以内に抑える目標と整合する行動を取る
脱退が相次ぐ背景
NZBAでは厳格な脱炭素基準の高度化が進んでいるが、これに反発する動きが広がっている。ドナルド・トランプ大統領の下でアメリカの政策が転換して以来、アメリカ、カナダ、オーストラリアを含む世界中の主要銀行がこの同盟からの脱退を決定している。具体的には、JPモルガン・チェース、シティグループ、バンク・オブ・アメリカなどの米大手6銀行が脱退したほか、カナダやオーストラリア(マッコーリー銀行)の主要金融機関などである。
日本の野村ホールディングスの広報担当者はResponsible Investorに対し「当社の脱炭素への取り組みは変わりません。私たちは、事業を展開する各地域・各国の規制や経済環境の変化に応じて、脱炭素戦略を適応させる能力を有しています。今後も、持続可能で低炭素な経済への移行を支援し、顧客の成功を後押しすることに注力していきます」と、コメントした。*4
MUFGの広報担当者は、脱退について、これは日本の銀行がウォール街の銀行に続いてNZBAから離脱する動きの一環であると述べた。 同社の脱退により、日本のメガバンクの中でNZBAに残留しているのは、みずほフィナンシャルグループのみとなり、その他の邦銀では、三井住友トラスト・グループ、農林中央金庫も現時点では加盟行として残る。 *5
NZBAの方針見直しで1.5℃目標の撤回?
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