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リチウム vs ナトリウム、次世代電池🔋の勝者は?

現在リチウムや他の電池材料の供給が限られており、価格も高いことから、代替電池の研究が進められている。ナトリウムイオン電池は、現在最も開発が進んでいる技術のひとつであり、近い将来、多くの用途で実用できる可能性がある。しかし、新しい電池技術の商業化を成功させるには何年もの研究が必要である。それに加えて需要が加速しているため、中期的な将来には電池が不足するリスクがある。

ナトリウムイオン電池技術は商業的に利用可能

中国の寧徳に本社を置く世界最大級のリチウム電池メーカーであるCATL*1は、乗用車用EVに使用されるナトリウムイオン電池の商業規模の製造を開始する。リチウムイオンに代わるナトリウムイオン化学の市場導入と成長が期待されている。

この記事では、2つの技術を比較しさまざまな用途におけるナトリウムイオン電池の使用可能性について考察する。

化学元素の比較: ナトリウムとリチウムの比較

地球上で5番目に多い元素であるナトリウム(Na)の天然存在量は、リチウム(Li)よりも著しく高い。地殻中のナトリウム濃度はリチウムの約1,180倍、海中ではなんと60,000倍である。

重要な利点の一つは、ナトリウムのコストにある。上海金属市場の価格を単純に比較すると、2023年6月時点で純粋なナトリウムとリチウム化合物の価格には20倍もの開きがある。炭酸ナトリウムの価格は1トン当たり約44,000円。一方、炭酸リチウムは1トンあたり約5,250,000円と、かなり高い価格で取引されている。

電池業界におけるナトリウムの現在の需要はごくわずかであり、リチウムの需要の急増とは対照的だ。2022年、リチウムイオン電池の価格が、ブルームバーグニューエナジーサイエンス*2が価格追跡を始めて以来12年ぶりに上昇した。主な理由は、電気自動車(EV)の電動化、電気産業機器やエネルギー貯蔵製造による電池需要の急増である。           

ナトリウムイオン電池とリチウムイオン電池の構造

リチウムイオン電池と同様に、ナトリウムイオン電池セルには正極と負極、セパレーター、電解液がある。また充電と放電の過程で、図1に示すように正イオンは電池の2つの電極間を行き来する。

Sodium Ion Battery Cell Schematic
図1:ナトリウムイオン電池セルの概略図 出典:マシーンデザイン

リチウムイオン電池と同様に、ナトリウムイオン電池もコバルトを含む活性成分を利用している。具体的には、コバルト酸ナトリウム(NaCoO2)がナトリウムイオン電池の主な活物質として使用され、リチウムイオン電池におけるコバルト酸リチウム(LiCoO2)の使用を反映している。

コバルトの持続可能性とコストに関する懸念が生じるにつれて、業界は代替品を模索し始めた。リチウムイオン電池では、NMC(ニッケル、マンガン、コバルト)やNCA(ニッケル、コバルト、アルミニウム)のような正極材料は、より豊富で費用対効果の高いLFP(リチウム、鉄、リン酸塩)化学で代替されつつある。同様に、研究者やメーカーは、ナトリウムイオン電池のコバルト含有化合物を、より持続可能で経済的な元素で代替することに積極的に取り組んでいる。これらの成分とナトリウムイオン電池セルにおける役割については、この記事を参照されたい。*3

ナトリウムイオン電池とリチウムイオン電池のエネルギーが似ていることから、ナトリウムイオン電池は現在リチウムイオン電池の使用用途に適している可能性がある。実際に代替利用するには劣化するまでの期間、極端な寒冷・高温条件下での容量損失、その他のスペックに関するデータを実際に確認する必要がある。

Table2
表2: ナトリウムイオン電池とリチウムイオン電池の総合比較。

出典:「リチウムイオン電池の将来に関する非学術的視点(補足情報)」*4 「Sodium-ion Batteries 2023-2033:技術・プレーヤー・市場・予測 ナトリウムイオン電池の利点」*5

持続可能性

将来的には海水淡水化によってナトリウム抽出を行うことが期待されている。この革新的な技術は、すでにネイチャー誌で広く取り上げられている。この技術をさらに発展させることで、電池の製造やリサイクル工程における二酸化炭素排出量やエネルギー使用量を削減することができる。また、ナトリウムイオンはほぼ無尽蔵にあることから、リチウムの採掘による環境負荷よりは少ないことから有利と考えられる。

電池の低コスト化

ナトリウムイオン電池の価格は現在低く、今後生産量が増え、技術がさらに進歩するにつれてさらに低下すると予想される。リチウムと異なり、原料不足は予測されていない。

図2は、左側はナトリウム(Na-ion) 、右側はリチウム(Li-ion) タイプの電池の価格比較である。

Battery Chemistry Price Comparison
図2: エネルギー単位当たりの各種電池の価格。出典:ウッド・マッケンジー、2022年*6

ナトリウムイオン電池の弱点

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