香港上海銀行(HSBC)の取締役会は、地球温暖化対策の国際枠組みパリ協定の目標達成に向けて2030年までにEU・OECD、その他の地域では2040 年までに、石炭火力発電および石炭採掘事業への融資を段階的に廃止する決議案を提出。3月28日の年次総会で 75%の株主が承認すれば発効される。キャンペーン団体ShareActionが率いる24億ドル規模の投資家連合が1月にHSBCに対して化石燃料関連事業への投融資を削減するよう要求した株主提案をめぐる交渉を経て、HSBC側が決議に至った。
決議案の内容は下記の通りだ。
- 石油・ガス、電力・公益事業などを始め、全セクターへの融資をパリ協定の目標と整合させるための短期・中期目標を含む戦略を設定・開示・実施
- EU・ OECDでは2030年までに、それ以外の市場では2040年までに、石炭火力発電への資金提供(プロジェクトファイナンス、企業融資、債権引受)を段階的に廃止する方針を発表・実施
- 戦略・方針の進捗状況を2021年の「年次報告書および財務諸表」から毎年、方法論、シナリオ、仮定概要を含めて報告
これに対し、株主はコミットメントを歓迎するものの、計画実行こそが肝心であると指摘する。また、株主らは下記の政策を組み込むようHSBCに求めている。
- 炭鉱・石炭発電に高く依存する企業、新規で炭鉱・石炭発電所・石炭インフラ導入を計画する企業への企業融資・引受の禁止
- 融資先・顧客に遅くとも2023年12月までに、2030/2040年のタイムラインに沿った脱石炭計画の策定・公表・実施を支援
- 石炭関連活動を拡大する石炭サプライチェーン全体への注視
今年は株主は株主提案を取り下げたが、HSBCの進捗状況に満足できない場合、来年更なる措置に踏み切る可能性があると示唆した。
大手銀行のクリーン化を後押ししているのは「物言う投資家」だろう。HSBCのみならず、他の大手銀行においても対応や説明責任が求められる場面がより一層増えそうだ。
参考リンク:
Share Action: Shareholder campaign secures HSBC coal phase-out