シンクタンクの独アゴラ・エナギーヴェンデと英エンバーは2021年1月25日、欧州の電力移行を追跡した報告書を共同で発表した。
報告書によると、2020年には再生可能エネルギーが化石燃料を抜いて、初めてEUの主要な電力源となることが明らかになった。
具体的には、2020年におけるEU27ヵ国全体の総発電量に占める再生可能エネルギーの割合は38%(2019年は34.6%)に増加し、37%に減少した化石燃料による発電を初めて追い抜いたのだ。
国別では、ドイツとスペインと英国も初めて再エネが火力発電を上回った。燃料別でみれば、CO2排出量が最も多い石炭火力発電は1年で20%減少した。これは、2020年の欧州の電力が2015年に比べて29%クリーンになったことを意味する。CO2排出係数で比較すれば、2015年の1キロワット時あたりのCO2量が(CO2/kWh)0.371-CO2/kWhだったのが、2020年には0.226kg-CO2/kWhにまで低下した。2019年度の日本の電力におけるCO2排出係数は0.444kg-CO2/kWh※だったことを考えると、欧州の電力は日本の電気より二倍近くクリーンといえるだろう。
しかし、EU全体で2030年までに温室効果ガスを55%削減し、2050年までにネットゼロを達成するには、今の石炭・天然ガスから再生可能エネルギーへの移行スピードが更に加速する必要がある。欧州の「グリーン・ディール」で定まれた再生可能エネルギーのターゲットを達成するには、風力発電と太陽光発電の発電量は2030年までに約3倍増加する必要があると言う。
新型コロナウイルスは、すべての国の経済に影響を与えた。しかし、化石燃料から自然エネルギーへの全体的なトレンドは変わらなかった。実際、パンデミックにもかかわらず、化石燃料による発電量の減少は著しかった。
日本政府は、これからの日本のエネルギーのあり方を決める「エネルギー基本計画」の見直し議論を昨年10月から始めているが、EUのように、電力の生産・消費構造の変革と自然エネルギーへの明確なシフトを中核として、2030年の電源構成を2050年のネットゼロ目標に整合させることを期待する。
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参考記事:
EMBER:Landmark moment as EU renewables overtake fossil fuels https://ember-climate.org/project/eu-power-sector-2020/, 2021.01.29
日本経済新聞:EU、再生エネ 最大電源に化石燃料を逆転 昨年https://r.nikkei.com/article/DGKKZO68545640W1A120C2FF8000?n_cid=kobetsu&s=6, 2021.01.29
電気事業連合会:2019年度 CO2排出実績について
https://www.fepc.or.jp/about_us/pr/pdf/kaiken_s_20201016.pdf ,2021.01.29