ESGニュース

トランプ政権は2026会計年度の予算案を明らかにした。予算の概要によれば、新たな国際援助支出はわずか96億ドルで、過去に承認された資金の削減を考慮すると83.7%の削減となる。*1

この予算が成立すれば、ドナルド・トランプ米大統領の予算要求は、開発援助や経済支援基金などの資金枠全体が廃止されるか、29億ドルの新しい「アメリカ第一の機会基金」に統合されることを意味する。

勝ち組は少なく、アメリカの国際開発金融公社が28億ドル、世界銀行の国際開発協会が3年間で32億ドルが約束されている。後者はジョー・バイデン前大統領の時の約束より8億ドル少ないが、一部の人々が懸念していたよりは多い。一方、人道支援32億ドル、グローバル・ヘルス62億ドル、食糧支援16億ドル、民主主義のための国家基金3億1500万ドル、その他の対外援助勘定が削減される。

米国議会は、最終的に予算配分を管理する。この予算要求が実現するかどうか、最終的な決定権を持つのは連邦議会である。しかし、トランプ大統領の1期目よりもイデオロギーが一致した議会になっているため、援助部門の多くは闘いを覚悟している。国連の未来は天秤にかかっているトランプ大統領の新たな予算要求により、予算の4分の1以上を米国から拠出している国連の将来が危ぶまれている。*2

米国は国連への最大の援助国であり、2023年には130億ドル(約1.9兆円)を拠出している。この資金の大部分は自発的なもので、残りの24%は分担金である。これは193の加盟国すべてが毎年支払うことを義務付けられている強制的なもので、国民総所得、債務負担、人口、その他の要因に基づいている*2。

トランプ大統領の最新の予算案は、多国間システムに対するほぼすべての米国の資金拠出を一時停止するものであり、トランプ大統領の就任1期目を含む過去の大統領政権とは対照的である。Devexのミゲル・アントニオ・タモナンは、2013年から2023年までの国連資金に関する最新の分析で、トランプ大統領の最初の任期中に、大統領は国連人口基金とパレスチナ難民のための主要な国連援助機関であるUNRWAの資金を削減した。他の9つの機関への自発的拠出金を減らしたが、いくつかの機関への補助額を増やした実績もある。

資金削減で数百万人が死亡する可能性

大幅な資金削減は、国連が提供する援助に全面的に依存している紛争地域の最も弱い立場にある人々や難民の生活を危険にさらす可能性がある。

「最も困窮している人々への資金を削減することは、自慢できることではありません。援助削減の影響とは、何百万もの人々が命を落とすことなのです」

国連緊急援助調整官トム・フレッチャー氏※3。

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2025/5/9

米国、外国援助8割削減へ:国連は大改革に直面

トランプ政権は2026会計年度の予算案を明らかにした。予算の概要によれば、新たな国際援助支出はわずか96億ドルで、過去に承認された資金の削減を考慮すると83.7%の削減となる。*1 この予算が成立すれば、ドナルド・トランプ米大統領の予算要求は、開発援助や経済支援基金などの資金枠全体が廃止されるか、29億ドルの新しい「アメリカ第一の機会基金」に統合されることを意味する。 勝ち組は少なく、アメリカの国際開発金融公社が28億ドル、世界銀行の国際開発協会が3年間で32億ドルが約束されている。後者はジョー・バイデン ...

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2025/5/4

化石燃料関連企業が引き起こした気候損害は約4,000兆円

世界111の化石燃料関連企業による排出が、1991年から2020年の間に約28兆ドル(約4,000兆円)相当の熱波被害をもたらしたとする研究結果が発表された。研究では、排出量ごとの気温上昇や経済損失が企業別に数値化され、5社だけで全体の3分の1を占めることが明らかになった。この手法は、企業ごとの「気候変動責任」※を科学的に裏付ける新たな証拠として注目されている。 ※気候変動責任とは?気候変動責任(climate liability)とは、気候変動に起因する損害に対する法的責任のことで、過去と将来の損害の両 ...

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2025/4/27

英国政府、カーボンクレジット使用原則について意見募集  

英国政府は、カーボンクレジットの使用に関する新たな原則とガイドラインを提案し、意見募集を開始した。本記事では、英国政府の方針を中心に、企業の脱炭素への取り組みを評価する最新動向を詳しく紹介する。 英国政府、カーボンクレジット使用に関する6つの原則を提案 英国政府は、企業やその他の組織がカーボンクレジットを利用して気候変動戦略を推進する方法に関する原則とガイドラインの意見募集を4月17日に開始した。*1 昨年11月、政府は企業によるカーボンおよびネイチャークレジットの活用に「明確で適切な役割」があると認めた ...

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2025/4/16

世界の総発電量の4割をクリーンエネルギーが占める

エネルギーに特化したシンクタンク「エンバー」の最新の報告書によると、2024年、再生可能エネルギーと原子力が世界の電力供給の40.9%を占め、クリーンエネルギーの成長が加速していることが明らかになった。*1 これに対し、米国ではトランプ政権が化石燃料の利用を推進し、再生可能エネルギーへの転換が後退している。しかし、他国、特にアジア市場ではクリーンエネルギーの導入が着実に進んでおり、今後のエネルギー市場における変革を予感させる。 世界のクリーンエネルギーの進展とアメリカの後退 2024年、世界の電力供給にお ...

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2025/4/13

IMO、世界海運のネットゼロ規制を承認

国際海事機関(IMO)は、2050年までに船舶からの温室効果ガス(GHG)排出量 をネットゼロにすることを目指し、世界全体で船舶からのGHG 排出量を削減する法的拘束力のある枠組みの確立に向け、新たな重要な一歩を踏み出した。  *1 IMOのネット・ゼロ・フレームワークは、産業セクター全体にわたる強制的な排出制限とカーボン・プライシングを組み合わせた世界初のものである。  2025年4月7日から11日にかけて開催された海洋環境保護委員会(MEPC)*の第83回会合(MEPC83)で承認されたこの措置には、 ...

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2025/4/12

ウォール街、脱炭素化の後退で+3℃の世界を想定

ウォール街の大手金融機関は、190カ国以上が合意した気温上昇の上限を大幅に超える、深刻な地球温暖化の未来を既成事実として捉えつつある。各社はこれに備え、気候変動によるリスクとチャンスの両面を見据えたビジネス戦略を構築している。 パリ協定を超える気温上昇を織り込む金融業界 業界関係者向けの文書から明らかになったのは、ウォール街の大手金融機関が、2015年に190カ国以上が合意したパリ協定が定める世界の平均気温の上昇を産業革命前と比較して、2℃より十分低く抑え、1.5℃度に抑制する努力を追求する目標を大きく超 ...

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2025/3/30

地球気候の現状 2024年:異常気象が大混乱を招く

2025年3月、世界気象機関(WMO)は『State of the Global Climate 2024(地球気候の現状 2024年版)』を発表した。このレポートは、観測史上最も高温となった2024年の地球環境を、科学的根拠に基づき詳細に分析したものである。*1 地球温暖化は記録的な速度で進行しており、大気中の温室効果ガス濃度は過去80万年間で最高レベルに達した。海洋熱、海面上昇、海洋酸性化、氷河や海氷の減少といった主要な気候指標のすべてが、異常を示す方向に振れている。極端気象による人的・経済的損失も過 ...

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2025/3/23

反DEI運動に対する株主の拒絶

2025年2月26日、ジョン・ディア(Deere & Co)の年次総会において、株主の98.7%が反多様性提案を否決した。これに先立ち、1月23日のコストコ(Costco)では98%、2月25日のアップル(Apple)では97.7%が同様の提案に反対している。これらの議決権行使結果は、企業の多様性・公平性・包括性(DEI)方針に対する市場の支持を示すものとなった。*1 反DEI運動の流れ 近年、米国ではDEIに対する批判が強まっており、特に保守派の政治家やシンクタンクが「逆差別」や「政治的偏向」と ...

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2025/3/23

SBTIがネットゼロ基準2.0を発表

サイエンス・ベースト・ターゲット・イニシアティブ(SBTi)は今週18日、待望のネット・ゼロ基準の更新案を発表した。この基準案は、2025年6月1日までパブリック・コンサルテーションが行われ、2026年に最終決定される予定である。*1 企業は2027年にネットゼロ基準のバージョン2(V2)の使用を開始できる。それまでの間、企業は既存の基準で目標を設定することができ、5年間または2030年末までのいずれか早いほうの期間、V2基準を使用することができる。既存のルール上ネットゼロの目標設定を目指すことを公表して ...

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2025/3/20

日本のメガバンク、気候変動対策グループから相次ぎ脱退

三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)が脱退してからわずか二週間で、野村ホールディングスが2025年3月12日に*1 、そして三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)も3月19日に銀行の投融資活動における温室効果ガス削減を促す国際的イニシアチブであるネット・ゼロ・バンキング・アライアンス(NZBA)から脱退をする方向で調整していることが明らかとなり、日本の銀行の脱退が相次ぐ形となった。​ ​*2 NZBAとは? NZBA(ネット・ゼロ・バンキング・アライアンス)は、国連環境計画・金融イニシアチブ ...

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