昨今消費者や投資家の人権意識が高まっていることから、国際社会で「ビジネスと人権」に対する施策や取り組みが増えてきている。
2011年に国連で「ビジネスと人権に関する指導原則」が採択されたことに加え、国連グローバルコンパクトの10原則や2015年に採択されたSDGsの普及などにより、人権の取り組みは後押しされてきた。
最近では、G7諸国の多くが企業のサプライチェーンにおける人権リスクや影響を特定し、人権侵害を未然に防ぐための報告義務やデューディリジェンスの要件を公表している。
欧州委員会でも、2022年2月にある一定の売上高で且つ人権リスクが高い業種の企業に対し、経済活動における人権や環境への悪影響を予防し是正する義務を課す「企業持続可能性デューディリジェンス指令案」を発表。具体的な規制や取り組みも出てきている。
日本政府や経団連の人権への取り組み
日本も2020年10月に政府が企業活動における人権尊重の促進を図るため「ビジネスと人権」に関する行動計画を策定した。
さらに2021年6月に改訂されたコーポレートガバナンス・ コードにおいても、企業の取締役会が検討すべき課題に「人権の尊重」が明記された。
ここでは、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」を踏まえて、人権デューディリジェンスのプロセスを導入することを期待している。
そして2022年3月には、サプライチェーンにおける人権尊重のためのガイドライン検討会も開催され、2022年夏までに人権デューディリジェンスのガイドライン案を取りまとめることも掲げられている。この取り組みはアジア初となる。
それに伴って経団連も、Webサイトで政府が提唱する「新しい資本主義」とともに「サステイナブルな資本主義」の実践を掲げ、市場経済の中に社会性の視点(from the social point of view)を取り入れることや人権について取り組むとした。
日本企業の人権への取り組みと課題は
日本企業の人権の取り組みはどうか?ワールド・ベンチマーク・アライアンス(WBA)とビジネス と人権リソースセンター(BHRRC) が先月発表された最新レポートによれば、調査対象となった日本企業67社のうちの79%が人権へのコミットメントを開示、40%が国際労働機関(ILO)の労働権の尊重へもコミットしていると報告している。
しかしながらコミットメント(宣言)と、人権デューディリジェンス(HRDD※)やステークホルダー・エンゲージメントのような具体的な行動との間には、明らかなギャップが存在しているとして、課題があることも指摘している。
(※)▼人権デューデリジェンス(HRDD)...企業が事業活動に伴う人権侵害リスクを把握し予防や軽減策を講じること(日本経済新聞)
特に、「人権への影響の統合と行動」や「第三者の苦情処理メカニズムへの取り組み」について、それぞれ85%と82%の日本企業は未達成となっている。
さらに85%の企業が
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