欧州

欧州連合(EU)の議員らは2月20日(火)、農業や工業プロセスから排出される二酸化炭素の除去を認証する制度を整備する提案について、世界で初めて政治的合意に達した。欧州議会とEU加盟国理事会の暫定合意は、2050年までに排出量を実質ゼロにするというEUの目標に到達するため、EUにおける高品質の炭素除去※を拡大することを目的としている。*1

※「二酸化炭素除去」(英:Carbon Dioxide Removal、「CDR」)とは?
二酸化炭素除去とは、大気中のCO2を除去することを意味する。2050年までにCO2排出を実質ゼロにするためには、企業や家庭が排出するCO2の量を減らすだけでは難しく、大気中に存在しているCO2を除去することが不可欠なことから、日本や欧米を中心に注目が高まっている。CDRを可能とする技術は大きく分けて「自然プロセスを人為的に加速させる手法」と「工学的プロセス」がある。「自然プロセスを人為的に加速させる手法」については、CO2を吸収する木を増やす「植林」や、海洋のCO2吸収を促進する技術、岩石を粉砕・散布して人工的に風化を促進し、その過程でCO2を吸収する技術(風化促進)などが研究されている。一方、「工学的プロセス」に分類されるのは「DACCS=大気中のCO2を直接回収し貯留する技術」と「BECCS=バイオマスエネルギー利用時の燃焼により発生したCO2を回収・貯留する技術」で、長期のCO2固定が期待されるとともに除去効果の検証が容易なため、特に期待されている。*2

炭素除去はなぜ必要なのか?

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の最新報告書は、地球規模で急速な温室効果ガスの排出削減が行われない限り、地球温暖化を1.5℃に抑える可能性は低くなると指摘している。IPCC報告書は、二酸化炭素除去の拡大は、農業、セメント、鉄鋼、航空、海上輸送などのセクターから排出される削減が困難な残留排出量を相殺するために必要で、これから二酸化炭素や温室効果ガスの実質ゼロを達成するためには拡大が必須である、と明言している。*3

新しい認証制度でグリーンウォッシングを防ぐ

欧州委員会は2022年11月にこの提案を提出した。これは、最終的に大気中から除去されたCO2 1トンに相当する炭素除去ユニットの取引を可能にするEU全体のレジストリの創設に向けた第一歩である。この提案はまた、認証プロセスを調和させ、環境の完全性を確保し、社会的信頼を構築するために、カーボン・オフセットの第三者検証・認証の要件を定めている。

この提案は、欧州で発生した炭素除去を認証するための、EU全体の自主的な枠組みを定めるものである。質の高い炭素除去を定義する基準と、これらの炭素除去の真正性を監視、報告、検証するプロセスを定めている。この認証の枠組みにより、革新的な炭素除去技術と持続可能な炭素農業ソリューションを後押しし、同時にグリーンウォッシングを撲滅することが目的である。*4

この提案に関する欧州議会の議長である欧州議会議員のリーディア・ペレイラ氏は、新しい認証制度は「グリーンウォッシングを防ぎ、炭素除去への民間投資を促進する」と述べ、これは自主的な炭素市場の発展にも役立つと付け加えた。

EUは、住みやすい未来を確保するため、2050年までにカーボンニュートラルを達成することを約束している。  これは、温室効果ガスの排出量を大幅に削減し、産業や農業から排出される二酸化炭素を自然および技術的な解決策によって大気から除去する炭素除去によって、残留排出量を補う必要があることを意味する。

認証される炭素除去方法とは

認証を受けるためには、炭素の除去が正しく定量化され、気候変動に対する付加的な利益をもたらし、炭素を長期にわたって貯蔵し、炭素の漏れを防ぎ、持続可能性に貢献するものでなければならない。

認証は当面、任意である。しかし、EUの気候変動目標やパリ協定の下での国別目標(NDC)を達成するために使用できるのは、認証されたユニットだけである。

EUの枠組みでは、炭素を除去・貯蔵するいくつかの方法を認証することができる。

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