米国

バイデン政権は、自主的な炭素市場に関する7つの新原則を発表し、連邦政府の気候変動アドバイザーや農務省、エネルギー省、財務省の官房長官らが署名した。この原則は、最近論争の的になっている自主的な炭素市場(VCM)への信頼を回復することを目的としている。

5月28日に発表された同原則は、企業のCO2オフセットクレームの信頼性への懸念が出ていることを認めながらも、炭素市場への投資は米国の気候変動目標に向けて「大きな前進をもたらす」ことができると述べている*1。

VCM市場では、企業が新たに植林するなど、温室効果ガスを削減または除去するプロジェクトから創出されるクレジット(排出削減証明)を購入し、自社の排出量の相殺(オフセット)に使うことを可能にする。買い手は、そのクレジットを自社のCO2削減目標に算入することができる。BloombergNEFの調査によると、この市場は2023年には20億ドル(約3130億円)近くになると評価されていたが、最近の報告によると、クレジットの質に関する懸念が長引く一方で、国際的な基準がまだまとまっていないため、炭素クレジットの取引量は去年から56%減少している*2。

自主的炭素市場(VCM)への責任ある参加のための原則

7つの原則は以下の通りである:

  1. 炭素クレジットは信頼できる基準を満たし、「真の脱炭素化」を表すものでなければならない。
  2. クレジットを創出する活動は、自然環境や社会に与える悪影響を避けるべきである。
  3. 企業は自らのバリューチェーンにおけるCO2削減を優先すべきである。
  4. 企業は、購入したクレジットと償却したクレジットを公表すべきである。
  5. クレジット利用者の公的主張は、償却クレジットの気候への影響を正確に反映すべきであり、高い完全性基準を満たすクレジットにのみ依拠すべきである。
  6. 買い手は、マーケットの健全性の改善を継続すべきである。
  7. 政策立案者と市場参加者は、効率的な市場参加を促進し、取引コストの低減を図るべきである。

バイデン政権が発表した今回の原則には法的拘束力はないが、買い手、オフセット・プロジェクト開発者、クレジット認証機関にとって、より明確な「インセンティブとガードレール」の開発に拍車をかけることを意図している。

カーボン・クレジットは、企業が直接削減することのできない企業のサプライチェーンからのスコープ3排出量に対処するため、また新興国における気候変動緩和プログラムの資金調達のために極めて重要であると、支持者たちは考えている。

しかし、過去2年間の調査によって、一部のクレジットは約束されたほど排出量削減効果がなかったことが明らかになっている。イギリスのガーディアン新聞が公表した調査によると、最大のクレジット認証機関が発行した森林保護クレジットの90%は、実際の炭素削減に貢献していなかったと批判を受けている。

ホワイトハウスは市場の実態を踏まえて、ファクトシートの中で、「あまりにも多くの場合、クレジットは、市場参加者が透明性を持って、確実にクレジットの購入が検証可能な脱炭素化を実現するために必要な高い基準を満たしていない」と述べている。

「質の高い」クレジットを求める声

こんな状況に対抗するため、標準化団体や企業は「高い誠実さ」のある炭素クレジットを求めている。ホワイトハウスの新しい原則は、このアプローチを強く支持している。

ホワイトハウスによれば、

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