気候変動

医学誌『ランセット(The Lancet)』に掲載された最新の調査報告書によると、2050年までに推定100億人の人口を養うための持続可能な食料システムにへ転換しても、農業の温室効果ガス排出量を半減させられる一方で、「人類に食料を届ける限り、温室効果ガスの排出を完全にゼロにすることはできない」と結論づけた。*1

食料生産には避けられない環境コスト

EAT-ランセット委員会(EAT-Lancet Commission)による本報告書は、35か国70名の食料・気候科学者によって作成された国際的研究である。報告書によれば、食料生産はすでに世界の温室効果ガス排出量の約3分の1を占めており、最も持続可能な条件を想定しても、年間約50億トンの二酸化炭素換算の排出が残るとされる。EAT-ランセット委員会共同議長であるヨハン・ロックストローム氏(ポツダム気候影響研究所)は、「人類に食料を供給することは常に生態的なフットプリントを伴う」と述べ、食料部門だけでは排出ゼロは達成できず、他の産業・輸送部門でのより急速な脱炭素化が不可欠であると強調した。

また著者らは、生物多様性、水、土地、栄養汚染などを含む9つの「地球の限界(プラネタリーバウンダリー)※1」全体にわたって食料の影響をマッピングし、食料システムが生物多様性の損失、淡水資源の枯渇、窒素およびリン汚染の最大の要因であり、気候変動にも大きく寄与していると結論づけた。多くの国の気候計画は、農業がネットゼロ排出を超えて進むことを前提としており、他の部門の移行が遅れることを許容しているとロックストローム氏は述べた。「欧州連合はエネルギー転換の道筋を設定しているが、農業を実際にゼロにすることはできないという事実を考慮していない」と彼は述べた。※1「惑星の健康診断、世界は 「危険な新時代 」に突入 | ThinkESG」参照

植物中心の食事への転換

同報告は、2019年に提示された「プラネタリー・ヘルス・ダイエット(Planetary Health Diet)」の更新版を提示している。これは

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ESGニュース ThinkESGプレミアム会員限定

2025/11/7

食べ続ける限り決して排出ゼロにはならない

医学誌『ランセット(The Lancet)』に掲載された最新の調査報告書によると、2050年までに推定100億人の人口を養うための持続可能な食料システムにへ転換しても、農業の温室効果ガス排出量を半減させられる一方で、「人類に食料を届ける限り、温室効果ガスの排出を完全にゼロにすることはできない」と結論づけた。*1 食料生産には避けられない環境コスト EAT-ランセット委員会(EAT-Lancet Commission)による本報告書は、35か国70名の食料・気候科学者によって作成された国際的研究である。報告 ...

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2025/9/29

COP30国連気候サミットを前に各国が新たな気候目標を提出

11月10日からブラジル・ベレンで開催される国連気候変動会議COP30まであと数週間となり、各国は2035年までの新たな気候変動対策目標の提出を急いでいる。 しかし、それらは壊滅的な気候変動を防ぐのに十分になるだろうか?日本以外の主要国の現状の国別目標の提出状況や進展について、本記事でピックアップする。 「これ以上の危機はない」と国連高官はニューヨークでの国連気候サミットを前に記者団に語った。過去数ヶ月の夏だけで、大規模な洪水、干ばつ、長期化する熱波など、数々の異常気象が各地の人々を襲った。気候災害は「あ ...

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2025/9/28

SBTIや国連で、自然に基づく解決策を排除する動きに科学者が反論

気候科学者の連合は、気候変動に関する国際枠組みから自然を基盤とした気候変動対策(NCS)を排除する制約的な政策の再考を世界の政策立案者に強く求めている。こうした排除は緊急に必要な温室効果ガス排出削減を遅らせる恐れがあると警告している。*1 企業の科学的根拠のある温室効果ガス排出量削減目標設定を推進するSBTi(Science Based Targets Initiative)と国連パリ協定第6条4項監督機関宛ての書簡*2で、40名以上の科学者らは「自然に基づく解決策」を永続性が欠如しているとして不当に軽視 ...

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2025/9/3

投資家の85%が今後2年間でESG運用資産の増加を予測

ブルームバーグ・インテリジェンスの最新ESG投資家調査によると、投資家の約85%が今後2年間でESG関連運用資産(AUM)の成長を予想している。 3分の2が気候変動対策に焦点を当てたAUMの同様の成長を見込んでおり、政治的・市場的な反発が続く中でも持続的な勢いが示唆されている。*1 回答者のほぼ半数が、2027年までにポートフォリオの15%以上をESGに割り当てる意向を示し、44%が気候関連商品についても同様の割合を見込んでいる。本調査は北米、欧州、アジア太平洋、中米、南米の投資専門家252名を対象に実施 ...

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2025/8/25

EU、2040年温室効果ガス90%減、約4億トンの炭素クレジットの活用も

7月に、欧州委員会は1990年を基準年とする2040年までのEU全体での温室効果ガス(GHG)排出量削減目標を90%と提案した。これは、EUの2030年排出量削減目標55%と2050年までのネットゼロ目標の中間的な重要なマイルストーンとなる。新たな2040年目標には一定の柔軟性が組み込まれており、パリ協定に準拠した国際的な炭素クレジットの限定的な使用を認めている。本記事では、この目標が投資家と産業に与える影響を詳しく分析する。 2030年と2050年の気候変動目標とは異なり、提案された2040年気候目標に ...

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2025/8/25

プラスチック汚染終息を求めた国際会議は失敗?

プラスチック汚染を根絶するための世界初の法的拘束力ある条約を最終決定する重要な交渉の場である国連会議が、2025年8月5日から14日までスイス・ジュネーブで開催された。本記事では、プラスチック汚染の現状、国連会議の結果等を解説する。 気候変動と環境汚染の両方の原因としてのプラスチック プラスチック生産は気候変動の主要因の一つであり、世界の温室効果ガス(GHG)排出量の3〜5%を占めている。これは航空セクターと同等の規模であり、今後介入がなければ2050年までにその生産量は2倍から3倍に増加すると予測されて ...

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2025/8/5

国際司法裁判所の勧告的意見:各国政府には気候変動による被害を防ぐ法的義務がある

2025年7月24日、国際司法裁判所(ICJ)は、国家の気候変動に関する義務について初めての勧告的意見を示した。国連総会の要請により発出されたこの意見は、国家が気候危機に対して負う法的責任を詳細に明らかにしたものであり、パリ協定以来、国際気候法における最も重要な進展である。ICJは、気候変動を「存在に対する脅威」と明確に位置付け、国家の義務はもはや努力目標ではなく、法的拘束力を持つ実効的な責任であると断言した。*1 本記事では、ICJがどのような法的根拠に基づいて各国の義務を定義したのか、なぜこの意見が国 ...

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2025/7/27

電気自動車、2030年までに市場シェア40%超へ

国際エネルギー機関(IEA)の報告書によると、電気自動車(EV)の市場シェアは2030年までに40%を超える見通しである。*1 これは、世界各地で電気自動車がますます手頃な価格で購入できるようになっていることが大きな要因である。電気自動車(EV)の世界市場が急速に成長しており、2030年までに市場シェアが40%以上に達する見通しの背景について本記事で解説する。特に、価格低下や新興国での普及拡大、運用コストの優位性が普及を後押ししていることについて深掘りする。 2025年中に世界の自動車販売の4分の1 IE ...

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2025/8/3

ブラジルの国会が「環境破壊法案」を可決、重大な環境後退に

ブラジル議会が、ブラジルの環境許可制度を弱体化させる法案を7月17日の未明に可決した。この法案は、自己承認型の許可制度を導入し、決定権を地方の政治家に委ねる内容となっている。 新法は、鉱山ダムなどの大規模企業に対する重要な影響評価を緩和し、数百の先住民と国の奴隷文化の最後の痕跡であるキロンボラコミュニティを脅かす可能性がある。 この法案の可決は、ルラ大統領と右派主導の国会との間の継続的な政治危機の真っ只中で行わた。NGOや環境保護団体はこれを「環境破壊法案」と称し、過去40年間で最も重大な環境後退と位置付 ...

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2025/6/30

大口投資家が森林破壊の停止を呼びかけ

合計9.2兆ドル(約1300兆円)の運用資産を保有する機関投資家からなるネット・ゼロ・アセットオーナー・アラインス(NZAOA)※は、投資家が投資活動を通じて森林破壊を阻止するための新たなガイドラインを発表した。*1 ※NZAOAは国連環境計画-金融イニシアチブ(UNEP-FI)が事務局を務め、アリアンツ、カリフォルニア州公務員退職年金基金(CALPERS)、日本生命や第一生命などの大手機関投資家が加盟する団体で、メンバーは2050年までに温室効果ガス排出量実質ゼロの投融資ポートフォリオに移行することをコ ...

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