EUのプラスチックへの規制強化
EUのプラスチック規制強化を受け、一定比率の再生プラスチックを含む製品や生分解性プラスチックの製品が義務付けられる。さらにEU域内では循環的にプラスチックを利用するためのインフラが整備され、日本企業は日本の技術や製品が市場から締め出されることに危機感を覚えている。今、国際ルールを反映した新規の製品・技術開発が早急に必要とされている。
日本でプラスチック循環利用に向けた取り組み:CLOMA
国際的なプラスチック製品に対する規制強化を受け、国内ではCLOMA(クリーンオーシャンマテリアルアライアンス)が2019年に立ち上げられ、プラスチックの製造・使用・販売・回収・再生・処理に携わる国内を中心とした484の企業、自治体、団体が参加している。組織内のネットワークを通じ、新素材や技術の開発、インフラ作りに向けた実験などの協働が目指されている。
「プラスチックに関する知見と技術を業種業界の壁を超えた企業間連携を通じて集約し、プラスチックを極限まで有効利用する社会づくりを主導する。」CLOMA
プラスチック循環利用のロードマップ
CLOMAは2050年にサーキュラエコノミー(プラスチック原料100 %リサイクル)の実現を目指している。そのため、素材開発だけでなくプラスチックの生産から消費・処理までの利用過程全体の改革が求められ、各段階での課題解決に取り組んでいる。 現在はプラスチック使用量削減、マテリアルリサイクル率の向上、ケミカルリサイクル技術の開発・社会実装、生分解性プラスチックの開発・利用、紙セルロース素材の開発・利用の5つの分科会がある。
※マテリアルリサイクル:回収されたプラスチックを粉砕し溶融後、再度加工成形を行う。
再生されたプラスチックは元のプラスチックと同じ強度や熱耐性を持たないため、新しい原料(バージンマテリアル)を混ぜることが必要とされる。
※ケミカルリサイクル:回収されたプラスチックを化学処理することで石油精製後の原料の状態に戻し、再度成形加工することで新規のプラスチックと同じ材料が得られる。
※代替素材:植物由来のバイオマスから加工されるプラスチックや生分解性のプラスチックを指す。紙製品の利用や、紙と他の代替素材が複合した新素材も含まれる。
CLOMA hpより
未来デザインタスクフォース
CLOMAの会長である花王会長の沢田道隆が主導するチームは目玉プロジェクトの一つであり、その役割はプラスチックの循環利用を加速させることである。素材、容器成形、消費財メーカー、小売り、IT(情報技術)、金融機関、コンサルティング会社から選抜された若手社員によって構成される。
本タスクフォースは現在のCLOMA内部の取り組みを踏まえたプラスチック循環利用の将来像を描き、新市場や新しいビジネスモデル、ビジネスチャンスを発見し、政策として提言することが目標となっている。
これまでの日本における製品や包装容器は使い捨てであることが前提にあり、プラスチックの循環利用を目指す上では、原料の選択、製品設計、販売手法、ゴミの処理に至るまで変革を起こす必要がある。若手社員による大胆で新しい発想が必要であると沢田会長は言う。
代替素材開発に関連するプロジェクト
CLOMA発足後に立ち上げられた共同事業化案36件のうち半数以上が代替素材関連の開発である。その中でいくつかの取り組みやプロジェクトの詳細を紹介する
日本製紙・三菱ケミカル
温室効果ガスを削減する一つの戦略として、包装や容器の原料をプラスチックから再生可能な資源である紙に転換する戦略がある。一方で包装される商品は湿気や細菌などから保護されなければならない。日本製紙は三菱ケミカルとタッグを組み、紙に生分解性のプラスチックを組み合わせることで、この課題を解決する製品を開発しており、廃棄プラスチックの削減に貢献することとなる。
ヨシモト印刷社・日本製紙・三菱化学・独シンテゴンテクノロジー
ここから先は「ThinkESG プレミアム」会員限定の
コンテンツです。
4つの特典が受けられる「ThinkESG プレミアム会員(1ヶ月定期購読)」の詳細についてはこちらをご覧ください。
「ThinkESG プレミアム会員(1ヶ月定期購読)」へはこちらからお申し込みいただけます。