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2030年までに地球の30%を自然環境保全地域に

カナダ・モントリオールで12月19日に閉幕した国連の生物多様性に関する会議(COP15)で、2030 年までに生物多様性の損失を阻止・回復するための新しい国際協定「昆明・モントリオール生物多様性国際枠組み(Global Biodiversity Framework - GBF)」が国連生物多様性条約の下で196カ国によって採択された。

GBFは、生物多様性の損失への対処、生態系の回復、先住民の権利の保護を目指している。2030年までに地球の30%と劣化した生態系の30%を保護下に置くなど、自然の 喪失を食い止め、回復を実現するための具体的な措置が盛り込まれている。また、大きな争点と なった途上国への支援を増やす提案も含まれている。

昆明・モントリオール生物多様性国際枠組み(GBF

GBFは、自然を保護するための4つの包括的な目標で構成されている。

  • 2050年までにすべての種の絶滅速度を10分の1にする
  • 自然の価値が評価、維持、強化されるような生物多様性の持続的利用および管理
  • 遺伝資源から得られる利益の公正な分配
  • GBFを実行するための手段が全締約国、特に後発開発途上国と小島嶼国にアクセス可能となること

この文書の最後には先住民族の領土と地域社会の重要性を認識する文言が示されている。地球上 で最も豊かな生物多様性地域の3分の1以上が先住民族が居住する地域にあることから、公正な自 然の移行を実現する上でこの認識は非常に重要である。

前回策定された生物多様性に関する合意は、2020年までの10カ年計画が示され、生物多様性に関 する「愛知目標」の名の下、自然保護と保全に関する20の目標が掲げられたが、失敗に終わった。 そのため、この合意はパリ協定に擬えて国や地域ごとの具体的な行動の触媒となることが求められ ている。

23のターゲット 

GBFの包括的な枠組みでは以下を含む23の具体的なターゲットが設けられ、生物多様性の損失を 阻止・回復する具体的な行動が国境を越え、各セクターで実現されることが期待される。特に、発展 途上国に対する資金提供は具体的な額が盛り込まれている。

  • 世界の陸地、沿岸域、海洋の少なくとも30%を効果的に保全・管理すること。
  • 陸上および海洋の生態系の30%を回復させる。
  • 生物多様性の重要性が高く、生態系の健全性が高い地域の生物損失をほぼゼロにする。
  • 世界のフードロスを半減させる。
  • 生物多様性に危害を与える企業に支給されている補助金を年間5000億ドル以上廃止し、生物多様性の保全と持続可能な利用のための積極的なインセンティブを拡大する。
  • 生物多様性関連資金のため、官民から少なくとも年間2,000億ドルの資金を調達すること。
  • 発展途上国への国際的な資金フローを少なくとも年間300億ドルに引き上げる。
  • 多国籍企業や金融機関に対し、事業、ポートフォリオ、サプライチェーン、バリューチェーンを通じた生物多様性へのリスクと影響を監視、評価し、透明性をもって開示することを義務 付ける。

全体として定量的なターゲットが設定されたことから目標達成への進捗の追跡と報告が容易になる ことが予想され、これまで滞っていた「具体的な行動」を促すと期待される。

GBFに対する投資家の見解

英資産運用会社Schrodersのサステナビリティ投資のトップを務めるアンディ・ハワードは「自然リス クが投資リスクとリターンに不可欠な要素であり、自然への投資には明らかな機会が存在する」と し、COP15の生物多様性に関するグローバルな取り決めは、金融界にとって無視できないシグナル であると述べた。今後、金融界としては自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)への対応と自 然への投資の二点について一層取り組みが活発になると説明している。

GBFのターゲットの一つに明確に企業や金融業界に対して、自然関連リスクの測定と価格付けの努 力を継続することを求めるものがある。自然関連財務情報開示タスクフォースのようなイニシアチブ は来年最終版を迎えるにあたり、情報開示をさらに標準化し促進していくと考えられる。

気候変動対策と生物多様性保全の両立が鍵となる

自然環境の保全・回復への資金循環がカギとなる。11月にエジプトで開催された気候変動に関する 国連会議COP27では気候変動目標を達成する上で自然を基盤とした解決策が重要であることが認 識され、最も費用対効果の高い炭素削減・除去メカニズムの一つであることが広く認知されてきてい る。森林破壊の防止や生態系の再生に価値を付けるボランタリー・カーボン市場のような解決策を責任をもって計画・実行することによって自然や生物多様性、そしてプロジェクトの周辺の地域に大 きな恩恵をもたらすことが期待される。

既に多くの国が、国家気候変動対策計画(NDC: Nationally Determined Contributions)に自然を基 盤とした解決策を盛り込んでいる。

企業においても、CO2ネット・ゼロを達成するための重要な手段として、自然を基盤とした解決策に対して関心が高まっている。2030年までにオフセット需要が15倍に増加するに伴い、オフセットを生 み出す自然資本資産に対する需要も増加すると予想されている。

気候変動は自然環境の保護や回復を促す触媒として重要な働きを示している。これは政策目標や 長期目標などの大規模な投資に転換する機会であり、その実現に民間企業が重要な役割を果たす ことができると見られている。

GBFに対する環境NGOの見解

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