2023年5月9日、電源開発株式会社(Jパワー)に対して気候変動リスク管理に関する株主決議案が提出され、同社の次期社長の選任議案への反対票を投じることが判明した。Jパワーは全国95カ所で発電所を保有する日本の大手発電会社で、発電した電力を電力会社などに販売(卸売り)している。発電設備出力はおよそ1,810万kWにのぼるが、その約半分は火力発電である。*1
Jパワーと脱炭素戦略についてエンゲージメント(建設的な目的をもった対話)してきた大手機関投資家3社である欧州最大の資産運用会社であるアムンディ、HSBCアセット・マネジメント、環境保護団体のオーストラリア企業責任センター(ACCR)は、世界最大の上場ヘッジファンド会社であるマン・グループの同意のもと、Jパワーに気候変動に関する株主決議案を提出した。*2
決議案には以下の2点の提案が含まれる。*3
- パリ協定の目標に沿った、信頼できる短・中期的な排出削減目標を設定し、開示する。
- 排出削減目標に対する進捗をどのようにインセンティブとして報酬制度に反映させるかを開示する。
機関投資家によると、J パワーの目標設定は、パリ協定や科学的根拠に基づくものではない。また、石炭火力発電資産の除却スケジュールも示さず、アンモニア混焼などの確立されていない技術に設備投資して発電施設の延命化を図る計画であると同社の戦略を批判している。今回の提案から、信頼できる脱炭素戦略こそがJパワーの長期的な企業価値を守り、株主の財務リスクを軽減することにつながると長期機関投資家たちが考えていることがわかる。
昨年行った同様の排出量目標に関する提案は4分の1以上(26%)の株主から支持された。しかしJパワーが重要な株主投票に応じなかったこと、および現行の気候変動対策が長期的な価値に及ぼすリスクが高まっていることから、脱炭素化という喫緊の気候変動対策課題に対する同社の戦略は不十分であると判断し、同社の気候変動戦略の主要責任者である菅野仁代表取締役副社長の選任に関する議案に反対票を投じる意向を表明した。菅野氏は3月に社長昇格が内定しており、6月の定時株主総会後の取締役会を経て正式に任命される予定である。*4
各投資家のコメントは以下の通りである。
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