著名な気候科学者50人が6月8日に発表した新しい研究結果によると、世界の「カーボン・バジェット(炭素予算)」と呼ばれる、地球の気温上昇を1.5℃以内に抑える確率を50%とするために大気中に放出できる温室効果ガスの推定値はわずか3年で半減した。
2020年、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は残りのカーボン・バジェットを約500ギガトン(ギガトン=10億トン)の二酸化炭素換算と計算した。しかし2023年初頭には、残量はその半分の約250ギガトンになっている。現在の世界の年間温室効果ガス排出量の約57ギガトンでは、この予算は5年で尽きることになる。
残りの炭素予算の推定値が減少したのは、2020年以降の継続的な排出と、人為的な温暖化の推定値の更新が重なったためだ。
さらに、同研究で明らかになったのは、化石燃料の燃焼が主な原因となる人為的な温暖化は、直近の10年間(2013年から2022年)の平均で産業革命前のレベルを1.14℃上回った。
これは、2010年から2019年の1.07℃から上昇している。人為的な温暖化は現在、10年あたり0.2℃を超えるペースで増加している。また、温室効果ガスの排出量は「史上最高水準」にあり、人間活動の結果、過去10年間(2012~2021年)で毎年平均54ギガトン(540億トン)に相当する二酸化炭素が大気中に放出されていると分析した。
リーズ大学のクライメート・フューチャー・センターのディレクターであるフォルスター教授は、次のように述べている
「まだ気温上昇は1.5℃には至っていないとはいえ、非常に高いCO2排出量が年々と放出されているため、炭素予算はわずか数年で使い果たしてしまうだろう。世界は排出量を減らすことにもっと熱心に、そして緊急に取り組まなければなりません」。
リーズ大学、クライメート・フューチャー・センターのフォルスター教授
最新の研究結果を発表した科学者たちは、地球規模の気候システムの変化の速さを考慮し、政策立案者、市民社会団体が、意思決定の基礎となる最新かつ強固な科学的証拠にアクセスする必要があると主張している。
COP28への警鐘
研究者は、この分析は、気候変動対策のペースと規模が不十分であるという「タイムリーな警鐘」であると述べている。12月にUAEで開催される国連気候変動会議COP28に向けて、専門家が今週からドイツのボンで会合を開き、2050年までに地球温暖化を1.5℃に抑えるための進捗状況の把握が行われることになっているためだ。
気候変動の状況に関する科学的な情報源は、国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が主参照点となるが、その主要な評価結果が出るまでの期間は5~10年であり、特に気候変動が急速に変化する場合には「情報格差」が生じる問題がある。そこで、今回の最新研究を発表した科学者らは、この情報格差をなくすために、新たなプラットフォームを立ち上げることを明らかにした。
気候変動に関するオープンデータプラットフォーム
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