ESGニュース ThinkESGプレミアム会員限定

2023年クライメート・テックのスタートアップ企業12選

2023年4月、温室効果ガスネット・ゼロの目標達成に向け、技術やイノベーションの課題が残る分野や領域で躍進している画期的な12社の企業がブルームバーグNEF (BNEF)によって表彰された。今年の受賞企業には、新しいタイプの持続可能なタンパク質の開発、銅の新しい採掘ルートの発見、製鉄によるCO2排出の排除、グリーン水素をより安価に製造する技術の開発など、多くの企業が含まれる。ここでは2023年に賞を受賞した12社を紹介する。*1

スタートアップ企業12選が描く未来

今日は実現不可能と思われることでも、明日にはありふれたものになることだってある。

BNEFが2010年にパイオニア賞を創設した当時は、持続可能な方法かつ経済的に世界に電力を供給するために太陽光、風力電気を開発する企業が主であった。2023年現在、それらの問題はほぼ解決している。再生可能エネルギー技術が登場しただけでなく、世界のほとんどの地域で、太陽光発電は化石燃料による発電よりも安く建設・運用できるようになったのだ。今のスタートアップ企業は、食糧やその生産方法、世界貿易の促進方法、未来の住宅の構成要素の製造方法など、残りの経済を環境に配慮したものへ発展させている。電気自動車は未来の乗り物として、ようやく市場に浸透してきたところだが、起業家たちはすでに、電気自動車が使用するバッテリーをリサイクルし、これまでのように大量のレアアースや貴金属を採掘しなくても済む方法を考え始めている。

受賞12企業が築こうとしているネットゼロの未来はきっとこんな世界だろう。2050年、新しくリサイクルされたバッテリーで走る電気自動車で訪れたレストランでは、発酵した微生物から作られたピリッとしたプロテインパウダーがかかった無農薬の枝豆が提供される。帰ろうと椅子を引くと、安価でクリーンな水素が燃料の貨物船が運んだ生コンクリートでできた滑らかなグレーの床に音が響く・・・。

2023年のパイオニア賞

BNEFは、世界6大陸の拠点に約250名の調査・分析スタッフを配置し、進化するエネルギー経済環境の上質な分析、データ、解説を提供、エネルギー関連をはじめとした各事業者、市場関係者、政策立案者を支援するブルームバーグのリサーチサービスである。*2

毎年開催しているパイオニア賞では、ネットゼロへの道を切り開くために克服すべき3つの課題分野と、これまでとは異なる取り組みを行う革新的な駆け出し企業のためのワイルドカード枠を設定している。今年は、水素・金属・食料が課題分野として設定された。エントリー企業は、温室効果ガス排出と地球への潜在的影響、技術の革新性と独創性の程度、導入と普及の可能性という3つの基準で評価され、42カ国から348件の応募の中から、以下の12社が選ばれた。

課題1:クリーンな水素の普及を加速する

世界で最も大量に存在する化学元素である水素は、燃やしても地球温暖化ガスが発生しない。さらに環境に配慮した水素は、工業規模の電解槽で再生可能エネルギーを活用して水を分解することで製造されるため、特に海運のようなエネルギーを多く必要とする分野では魅力的な選択肢である。しかし水素の製造、貯蔵、輸送に比較的コストがかかること、その汎用性の高さにもかかわらず、ほとんどの機械や産業が水素の使用に適応していないことなどが理由でエネルギー転換の際に着目されてこなかった。ただし、米国の気候変動対策法案により、水素に対する大規模な補助金が支給されることになったため状況は変わっていくだろう。そこでBNEFは、環境に配慮した水素の主流化を目指す新興企業3社を表彰した。

  • SunGreenH2社(シンガポール)2020年設立 資本金3.5Mドル(約4.7億)

独自のナノテクノロジーを用いて電極や電解槽などの部品を製造し、環境に配慮した水素の製造コストを大幅に削減する。この新しい電極は、エネルギー消費量を削減し、水素の生産量を増加させる。製品開発は初期段階で、2つの特許を申請中今後は、スペインのナタージー・イノバハブ社、オーストラリアとシンガポールの他のパートナーとともに、2023年に最初の商業用電解槽製品を展開する予定。

  • H2Pro社(イスラエル)2019年設立 資本金100M+ドル(136億円以上)

より少ないエネルギーで水素を製造するE-TACと呼ばれる新しい2段階電解システムを開発。ネイチャー・エネルギー誌の研究によるとこの方法で製造される水素は、今日の通常の装置で見られる効率68%に比べ、98.7%と非常に効率的である。米国と欧州の補助金を利用すれば、この分解技術で製造された水素は最も安価に入手できるため、化石燃料に引けを取らない。同社は、2023年に年間73トンの水素を製造できる実証プラントを建設しており、2025年に最初の商業展開、2030年までにギガワットスケールの製造能力を持つことを目標としている。

  • Mainspring Energy社(米国)2010年設立 資本金300Mドル(約720億円)

100%水素とアンモニアに加え、バイオガスやその他の燃料で直接運転できるリニア発電機を開発し、バックアップ電源を必要とする商業・工業用顧客や電力会社向けに販売している。この発電機は柔軟性が高いため発電事業者は、単一の脱炭素化ルートに縛られることなく、コストや入手可能性に応じて燃料を変更することができる。同社によると、米国の送電線ではなくリニア発電機を使用して発電した場合、1ユニットあたり年間1,400トンのCO2を削減することができる。

課題2:未来の電気のための持続可能な金属と材料

電力の使用量が増えるということは、電流を流すための銅の使用量も増えるため、BNEFは、2040年までに精製銅の年間需要が58%増加すると予測している。またリチウム、コバルト、ニッケルといった金属は、電気自動車用バッテリーでは不可欠な部品である。そもそも希少な鉱物や金属の発掘鉱山の建設は時間がかかるだけではなく、特に、規制が整っていない途上国で、土壌、水、野生生物、地域コミュニティに壊滅的な影響を与える可能性や児童労働者を含む労働搾取が問題視されている。エネルギー転換が一つの問題に対処しても、別の問題を引き起こすという事態を避けるため、新世代の新興企業は、より効率的でクリーンな採掘方法と、すでに使用された金属や材料をリサイクルする方法に取り組んでいる。BNEFは、将来の金属のサプライチェーンに効率性をもたらすことを目指す新興企業3社を表彰した。

ここから先は「ThinkESG プレミアム」会員限定の
コンテンツです。

4つの特典が受けられる「ThinkESG プレミアム会員(1ヶ月定期購読)」の詳細についてはこちらをご覧ください

「ThinkESG プレミアム会員(1ヶ月定期購読)」へはこちらからお申し込みいただけます

「ThinkESG プレミアム」会員の方はログインしてください。

ThinkESGプレミアム

プレミアム会員になる

-ESGニュース, ThinkESGプレミアム会員限定

© 2024 ThinkESG

ThinkESGプレミアム会員になりませんか?

ThinkESGプレミアム会員募集中!月々ワンコイン(495円税込み)で、最新のESGニュースやブログが読み放題!

あなたのESGリテラシー向上にお役立てください。