SBTiの企業ネットゼロ基準v2.0、主な変更点
企業の温室効果ガス排出量削減目標設定の主要基準策定機関であるSBTIは、企業向けネットゼロ基準バージョン2.0の最終草案を公表した。同草案はネットゼロ目標達成に向けた企業行動の柔軟性を強化すると同時に、実質ゼロ達成までの過程で削減しきれない継続的な排出量への責任ある対応を義務化する方向へ移行している。 主なポイント • 主な更新点:スコープ3目標達成方法の明確化、義務的な移行計画への対応を評価 • 今回の改訂案への意見提出期限は12月8日 • 現行スケジュールでは、新基準は来年(2026年)公表され、20 ...
COP30の舞台裏、アマゾン熱帯雨林での石油・ガス拡張支援に批判集中
11月10日からブラジルのアマゾン熱帯雨林に囲まれるベレン市で開催される国連気候変動会議COP30では、気候変動の最大の原因である化石燃料の使用削減と重要な解決策の一つとされる生態系の再生が注目テーマとなる。しかし、COP30に先立ち、環境NGO「Stand.earth」が公表した調査報告書によると、2024年1月以降にアマゾン熱帯雨林内で行われた石油・ガス採掘事業への大手銀行の直接融資が20億ドル(約3,000億円)に上る。脱炭素社会への道のりがやばめられる中、金融業界の社会的責任に再び焦点が当たる。* ...
食べ続ける限り決して排出ゼロにはならない
医学誌『ランセット(The Lancet)』に掲載された最新の調査報告書によると、2050年までに推定100億人の人口を養うための持続可能な食料システムにへ転換しても、農業の温室効果ガス排出量を半減させられる一方で、「人類に食料を届ける限り、温室効果ガスの排出を完全にゼロにすることはできない」と結論づけた。*1 食料生産には避けられない環境コスト EAT-ランセット委員会(EAT-Lancet Commission)による本報告書は、35か国70名の食料・気候科学者によって作成された国際的研究である。報告 ...
世界で注目が高まるネイチャーテックを徹底解剖
2025年10月17日、東京国際フォーラムで「NATURE TECH!」が開かれた。技術革新と自然再生を結びつける取り組みが紹介され、世界で注目が高まるネイチャーテックの動向が共有された。投資規模は約3000億円に拡大し、衛星やドローンによる自然の計測技術や、熊本など地域単位で自然を守る取り組みの重要性が示された。日本は今後、自然計測の国際標準化を主導していく方針を掲げている。*1 ネイチャーテックとは? ネイチャーテック(Nature Tech)とは、自然を測定・評価・再生・活用するための技術群である。 ...
COP30国連気候サミットを前に各国が新たな気候目標を提出
11月10日からブラジル・ベレンで開催される国連気候変動会議COP30まであと数週間となり、各国は2035年までの新たな気候変動対策目標の提出を急いでいる。 しかし、それらは壊滅的な気候変動を防ぐのに十分になるだろうか?日本以外の主要国の現状の国別目標の提出状況や進展について、本記事でピックアップする。 「これ以上の危機はない」と国連高官はニューヨークでの国連気候サミットを前に記者団に語った。過去数ヶ月の夏だけで、大規模な洪水、干ばつ、長期化する熱波など、数々の異常気象が各地の人々を襲った。気候災害は「あ ...
SBTIや国連で、自然に基づく解決策を排除する動きに科学者が反論
気候科学者の連合は、気候変動に関する国際枠組みから自然を基盤とした気候変動対策(NCS)を排除する制約的な政策の再考を世界の政策立案者に強く求めている。こうした排除は緊急に必要な温室効果ガス排出削減を遅らせる恐れがあると警告している。*1 企業の科学的根拠のある温室効果ガス排出量削減目標設定を推進するSBTi(Science Based Targets Initiative)と国連パリ協定第6条4項監督機関宛ての書簡*2で、40名以上の科学者らは「自然に基づく解決策」を永続性が欠如しているとして不当に軽視 ...
TICAD9から見るESG投資でつなぐ日本とアフリカ
アフリカの未来をめぐる国際的関心が高まる中、日本は持続可能な協力の新たな方向性を示している。 2025年8月に横浜で開催された第9回アフリカ開発会議(TICAD 9)は、その象徴的な舞台となった。会議では「協働」と「質の高い成長」が掲げられ、単なる援助からESG投資を通じたパートナーシップへの転換が打ち出された。 アフリカ初のESGサムライ債の発行や太陽光発電の急速な普及は、この新潮流を裏付ける具体的成果である。本記事では、TICAD 9の意義と日本・アフリカ協力の新たな潮流、そしてESG投資がもたらす展 ...
投資家の85%が今後2年間でESG運用資産の増加を予測
ブルームバーグ・インテリジェンスの最新ESG投資家調査によると、投資家の約85%が今後2年間でESG関連運用資産(AUM)の成長を予想している。 3分の2が気候変動対策に焦点を当てたAUMの同様の成長を見込んでおり、政治的・市場的な反発が続く中でも持続的な勢いが示唆されている。*1 回答者のほぼ半数が、2027年までにポートフォリオの15%以上をESGに割り当てる意向を示し、44%が気候関連商品についても同様の割合を見込んでいる。本調査は北米、欧州、アジア太平洋、中米、南米の投資専門家252名を対象に実施 ...
EU、2040年温室効果ガス90%減、約4億トンの炭素クレジットの活用も
7月に、欧州委員会は1990年を基準年とする2040年までのEU全体での温室効果ガス(GHG)排出量削減目標を90%と提案した。これは、EUの2030年排出量削減目標55%と2050年までのネットゼロ目標の中間的な重要なマイルストーンとなる。新たな2040年目標には一定の柔軟性が組み込まれており、パリ協定に準拠した国際的な炭素クレジットの限定的な使用を認めている。本記事では、この目標が投資家と産業に与える影響を詳しく分析する。 2030年と2050年の気候変動目標とは異なり、提案された2040年気候目標に ...
プラスチック汚染終息を求めた国際会議は失敗?
プラスチック汚染を根絶するための世界初の法的拘束力ある条約を最終決定する重要な交渉の場である国連会議が、2025年8月5日から14日までスイス・ジュネーブで開催された。本記事では、プラスチック汚染の現状、国連会議の結果等を解説する。 気候変動と環境汚染の両方の原因としてのプラスチック プラスチック生産は気候変動の主要因の一つであり、世界の温室効果ガス(GHG)排出量の3〜5%を占めている。これは航空セクターと同等の規模であり、今後介入がなければ2050年までにその生産量は2倍から3倍に増加すると予測されて ...









