ESG投資

2025年2月26日、ジョン・ディア(Deere & Co)の年次総会において、株主の98.7%が反多様性提案を否決した。これに先立ち、1月23日のコストコ(Costco)では98%、2月25日のアップル(Apple)では97.7%が同様の提案に反対している。これらの議決権行使結果は、企業の多様性・公平性・包括性(DEI)方針に対する市場の支持を示すものとなった。*1

反DEI運動の流れ

近年、米国ではDEIに対する批判が強まっており、特に保守派の政治家やシンクタンクが「逆差別」や「政治的偏向」としてDEI政策を問題視する動きが広がっている。ドナルド・トランプ大統領をはじめとする共和党の一部は、DEIや環境・社会・ガバナンス(ESG)を「企業経営における不必要な政治介入」と見なし、反DEIの大統領から州政府や議会レベルでの規制を推進している。(DEIと政治的対立、米国での反DEIの動きについて詳しくはこちらの記事から)

これに伴い、一部の州では公的年金基金の運用においてESG投資を制限する動きがあり、企業のDEI施策を見直す圧力も高まっている。一方で、多くの大企業や投資家は、DEIが長期的な財務パフォーマンスに貢献するとの認識を持ち、こうした反DEI運動に対して反対の立場を取っている。

企業の成長におけるDEIの重要性

今回の議決権行使結果について、企業の環境・社会・ガバナンス(ESG)に関する透明性向上と責任ある企業行動を促進する活動を行っているアメリカの非営利団体であるAs You SowのCEOであるアンドリュー・ベハー氏は「株主は、多様性と包括性が利益成長にとって不可欠であることを理解している。企業や株主が見ているデータを分析すれば、より多様な組織が財務的に優れた成果を上げるという結論に至るのは明らかだ」とコメントしている。*2

実際、As You Sowが発表した最新の分析報告書によると、5年間にわたる1,641社の調査の結果、多様な経営陣を持つ企業は、株主資本利益率(ROE)や投資収益率(ROI)といった主要な財務指標でより高い成果を上げていることが確認された。

このデータは、多様性を推進することが単なる社会的責任ではなく、企業の収益性と競争力の向上に直結する戦略的要素であることを示している。

反DEI運動の失敗

ここから先は「ThinkESG プレミアム」会員限定の
コンテンツです。

4つの特典が受けられる「ThinkESG プレミアム会員(1ヶ月定期購読)」の詳細についてはこちらをご覧ください

「ThinkESG プレミアム会員(1ヶ月定期購読)」へはこちらからお申し込みいただけます

「ThinkESG プレミアム」会員の方はログインしてください。

ESGニュース ThinkESGプレミアム会員限定

2025/3/23

反DEI運動に対する株主の拒絶

2025年2月26日、ジョン・ディア(Deere & Co)の年次総会において、株主の98.7%が反多様性提案を否決した。これに先立ち、1月23日のコストコ(Costco)では98%、2月25日のアップル(Apple)では97.7%が同様の提案に反対している。これらの議決権行使結果は、企業の多様性・公平性・包括性(DEI)方針に対する市場の支持を示すものとなった。*1 反DEI運動の流れ 近年、米国ではDEIに対する批判が強まっており、特に保守派の政治家やシンクタンクが「逆差別」や「政治的偏向」と ...

ESGニュース ThinkESGプレミアム会員限定

2025/3/23

SBTIがネットゼロ基準2.0を発表

サイエンス・ベースト・ターゲット・イニシアティブ(SBTi)は今週18日、待望のネット・ゼロ基準の更新案を発表した。この基準案は、2025年6月1日までパブリック・コンサルテーションが行われ、2026年に最終決定される予定である。*1 企業は2027年にネットゼロ基準のバージョン2(V2)の使用を開始できる。それまでの間、企業は既存の基準で目標を設定することができ、5年間または2030年末までのいずれか早いほうの期間、V2基準を使用することができる。既存のルール上ネットゼロの目標設定を目指すことを公表して ...

ESGニュース ThinkESGプレミアム会員限定

2025/3/9

ブラックロックの転換?〜自然資本市場とESG投資の新時代〜

世界最大の資産運用会社であるブラックロックが、自然資本を「外部性」ではなく「投資可能な資産」として正式に位置付けた。これは、資産評価のパラダイムシフトを示す重要な転換点であり、ESG投資の未来を再定義する可能性がある。*1 ブラックロックはこれまで、環境・社会・ガバナンス(ESG)に配慮した投資を推進してきたが、近年は「ESG」というラベルに対する市場の過敏な反応を受け、表立ったESG戦略から距離を置く動きを見せている。しかし、本質的な方向性は変わっていない。むしろ、長期的な財務レジリエンス(回復力)の確 ...

ESGニュース ThinkESGプレミアム会員限定

2025/2/24

トランプ政権が欧州のESG指令を脅かす

トランプ米大統領とその支持者が、連邦政府機関によるDEI (ダイバーシティ:多様性、エクイティ:公平性、Inclusion: 包括性)イニシアチブの禁止や、投資家がESG関連問題に関して企業と関わる権利の制限など、アンチESGの主張を迅速に行動に移していることは明らかになっている。この動きは米国内にとどまらない。 2月12日、トランプ大統領が米国商務長官に指名したハワード・ルトニック氏は、米国上院の公聴会で、企業サステナビリティ・デュー・ディリジェンス指令(CSDDD)は米国企業に「大きな負担」を強いるも ...

ESGニュース ThinkESGプレミアム会員限定

2025/2/11

2024年、世界のエネルギー転換投資が初めて300兆円を超える

調査機関ブルームバーグ・ニューエネルギー・ファイナンス(BNEF)の最新の報告書によると、2024年のエネルギー転換への世界投資は過去最高の2.1兆ドル(約315兆円)に達し、前年比11%増加した。 中国本土が再び成長の牽引役となり、世界全体の増加分の3分の2を占めた。成長に貢献したのは、昨年、エネルギー貯蔵投資とともに過去最高を記録した電動輸送、再生可能エネルギー、そして電力網の増強だ。 エネルギー転換技術への投資全体は過去最高を記録したが、成長のペースは、投資が年間24~29%増加した過去3年間よりも ...

ESGニュース ThinkESGプレミアム会員限定

2025/2/3

マイクロソフト、森林再生で650万トンのCO2除去を目指す

マイクロソフトは、ブラジルのアマゾンおよび大西洋岸森林の再生を目的として、クライメート・テック(気候テック)のスタートアップであるre.greenと新たな協定を締結した。 *1 本協定により、両社の協力関係は拡大し、パリ市の3倍の面積に相当する地域の森林再生が進められる予定である。 マイクロソフトは、これらのプロジェクトから合計650万トンのカーボン・クレジットを購入する計画である。 追加的に約350万トンの炭素除去 今回の協定は、2024年5月に締結された最初の協定を拡大するものであり、当初の協定では、 ...

ESGブログ・意見 ThinkESGプレミアム会員限定

2025/1/19

2025年のESG展望~サステナビリティの重要な年に向けて~

気候変動の影響が顕著化する中、年々異常気象や自然災害が増加しており、環境への取り組みが各国で優先事項となってきている。 一方で、近年、各国の金融センターでは、サステナブル・ファイナンスの方針が見直されている。石油・ガス価格の高騰やエネルギー安全保障の優先が影響し、特に米国ではサステナブル・ファイナンスが困難に直面している。 金融セクターは、将来のエネルギー転換を支える道を選ぶのか、それとも現在のエネルギー需要に押し流されるのか?本記事では、2025年におけるサステナブル・ファイナンスに関する7つの予測(* ...

ESGニュース ThinkESGプレミアム会員限定

2025/1/13

JPモルガンがネット・ゼロ銀行連合から脱退、米大手銀行の脱退が完了

米国最大の銀行であるJPモルガン・チェースが1月7日、ネット・ゼロ・バンキング・アライアンス(NZBA)から離脱することを発表した。これは、国連が支援する、投融資活動を通じて世界のネット・ゼロ目標を推進する銀行連合からの相次ぐ離脱となる。邦銀5行は引き続き同イニシアティブにコミットしているが、米銀の離脱が他の加盟行に与える影響は不透明だ。*1 JPモルガンは、ここ数週間の間にシティバンク、バンク・オブ・アメリカ、モルガン・スタンレー、ゴールドマン・サックス、ウェルズ・ファーゴが離脱したのに続き、NZBAか ...

ESGニュース ThinkESGプレミアム会員限定

2024/11/24

COP29合意:先進国は年間3,000億ドルの気候変動資金拠出へ

アゼルバイジャンのバクーで開催されていた国連気候変動枠組条約第29回締約国会議(COP29)は11月24日(日)、過去2週間にわたって開催されてきた交渉の最終日を2日後に控え、気候変動に脆弱な国々を支援し、世界的な再生可能エネルギーへの転換を加速させるため、先進国が年間3000億ドル(約46兆円)を拠出することを求める気候変動資金に関する最終合意で閉幕した。*1 COP29は「気候資金COP」と呼ばれ、締約国は新たな世界的な気候資金目標を設定することが期待されていた。気候変動資金に関する既存の目標は、先進 ...

ESGニュース ThinkESGプレミアム会員限定

2024/11/9

液化天然ガスのカーボンフットプリントは石炭より悪い

コーネル大学の新しい研究によると、液化天然ガスは、生産、処理と輸送を考慮すると、石炭よりも33% 多くの温室効果ガスを排出する。 *1 これは、10月3日発行の「エネルギーサイエンスとエンジニアリング」に掲載された「米国から輸出される液化天然ガスの温室効果ガスフットプリント」という研究から判明した。*2 米国は世界最大の輸出国 2016年に液化天然ガスの輸出が解禁されて以来、米国からの輸出は劇的に増加し、今や米国は世界最大の輸出国となっている。  この液化天然ガスは主にシェールガスから生産される ...

© 2025 ThinkESG