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2026年、世界は地政学的対立、景気の不透明感、気候変動、技術革新が同時進行する「競争の時代」に突入している。世界経済フォーラム(WEF)が公表した「Global Risks Report 2026」は、こうした不確実性がESG経営や投資判断にどのような影響を及ぼすのかを、具体的なデータと時間軸で示している。*1 本記事では、同レポートを手がかりに、今後10年間に企業と投資家が直面するESGリスクの全体像を読み解く。

Global Risks Report2026とは?

「Global Risks Report 2026」は、WEFが毎年公表している世界的リスク評価レポートの第21版で、学術界、企業、政府、国際機関、市民社会に属する1,300人超の専門家への調査を基に作成されている。同フォーラムは、政財界、学術界、市民社会のリーダーが集い、国境や分野を越えた課題解決を促進する国際的なプラットフォームであり、グローバル経済や持続可能性を巡る議論を主導してきた組織である。中立的な立場から長期的視点の分析を提供する点に特徴がある。

本レポートの特徴は、リスクを2026年、2028年、2036年という三つの時間軸で評価し、短期の危機と長期の構造問題を同時に捉えている点にある。レポートは将来を断定する予測ではなく、複数の起こり得る未来像を提示し、政策立案者や企業、投資家の意思決定を支援する分析ツールとして位置づけられている。2026年版では、世界が協調の時代から競争の時代へ移行したという認識が全編を貫いている。

協調なき競争が常態化する10年

本レポートが示す最も重要な前提は、世界がすでに国家間の地政学的・地経学的対立を軸とする「競争の時代」に入ったという点である。これは、協調による課題解決ではなく、貿易、技術、資源、安全保障を巡る対立が常態化している状況を指す。調査では、今後2年間の世界情勢について、回答者の50%が、地政学的衝突や経済危機、社会不安が重なり合う「混乱」または「嵐」の状態になると評価している。10年先では、その割合は57%にまで上昇する。

一方で、世界を平穏な状態と評価した回答者は、2年先、10年先のいずれにおいても1%にとどまる。不確実性は一時的な異常事態ではなく、世界秩序そのものに組み込まれつつある構造的な特徴となっている。短期的な危機対応に追われるほど、長期的なリスクへの備えが後回しにされるという悪循環が、すでに現実のものとなっている。

この傾向は、レポート内のリスク深刻度ランキングにも表れています。今後2年間では、1位が地経学的対立、2位が誤情報と偽情報、3位が社会の分断、4位が極端気象、5位が国家間武力紛争、6位がサイバー不安、7位が格差、8位が人権や市民的自由の侵食、9位が汚染、10位が強制的な移住です。一方、10年先では、1位が極端気象、2位が生物多様性の喪失、3位が地球システムの重大な変化、4位が誤情報、5位がAIの悪影響、6位が資源不足、7位が格差、8位がサイバー不安、9位が社会分断、10位が汚染となっており、短期は対立、長期は環境リスクが中心になる構図が示されています。

不確実性が支配する2026年と信頼の後退

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