世界経済フォーラム
世界経済フォーラム(WEF)は2026年9月15日、最高サステナビリティ責任者(CSO)のグローバルネットワークの103人への調査をまとめた初の報告書を公表した。6割超がサステナビリティの世界的な前進が今後1年維持か加速と見る一方、政策の反転と短期の業績圧力が最大の制約に挙がり、脱炭素社会への移行は「グリーン分岐」の局面に入ったと位置づけた。AIと気候変動への適応の扱いも焦点となった。*1
103人の回答が映す「実行の局面」
WEFの報告書「Chief Sustainability Officers' Outlook(最高サステナビリティ責任者の見通し)」は、同団体の「自然と気候センター」が運営するCSOコミュニティを母体としている。コミュニティには世界経済の幅広い断面を代表する大企業から189人のサステナビリティ・リーダーが参加しており、調査は2026年2月10日から3月18日まで実施され、103件の匿名回答を得た。回答は5大陸にわたるが、質問がグローバルな視点から設定されているため、結果は地域別に分解されていない。
調査期間中の2026年2月28日には、米国とイスラエルがイランへの一連の空爆を開始し、イランが域内各地への攻撃で応じてホルムズ海峡の商業航行を制限するという事態が起きた。報告書は、この状況が一部の回答に影響した可能性を認めつつ、参加者の大半は紛争より前に回答を終えていたと注記している。
巻頭言を書いたセバスチャン・バックップ氏とアカンクシャ・カトリ氏は、移行が「より重大な局面」に入ったとみる。公約と国際目標を軸に環境行動を組み立てる枠組みは「放棄されているのではなく、書き換えられつつある」とし、リーダーシップはいま、掲げられた野心よりも変化を実行する能力に左右されると指摘した。
6割超が今後1年の前進を「維持か加速」と見る
短期の見通しを問う設問では、世界のサステナビリティの前進が今後12か月で「変わらない」との回答が39%、「加速」が22%、「大幅に加速」が2%で、維持か加速と見る回答は合わせて63%に達した。対照的に「減速」が35%、「大幅に減速」が2%で、減速と見る回答は37%だった。組織レベルでも、企業のサステナビリティ戦略と投資が今後12か月で変わらないか加速すると見込む回答が約7割(69%)を占めた。
もっとも、この見通しは順風のなかで示されたものではない。報告書によれば、回答者の78%が安全保障と地政学の状況が今後1年のサステナビリティの前進に大きな足かせをかけると見込んでおり、紛争、ばらつく政策の方向性、弱まった多国間主義がその理由だ。短期の前進は、勢いと逆風が同時に働くなかで、柔軟で反応の速い戦略に左右されることになる。
自信は「世界が軌道に乗った」ことを意味しない
報告書はこの自信について、「ただ安心させるのではなく、行動を促すものであるべきだ」と釘を刺す。世界全体の成果は長期目標からなお隔たっており、
現行政策のもとでは世界は約3℃の温暖化に向かう経路にあって、パリ協定の「2℃を十分に下回る」という目標を大幅に上回る。生物多様性の保護・回復に向けた世界的な取り組みについても、現在保護ないし他の形で保全されているのは陸域・内陸水域の18.4%と海洋の10%にとどまり、2030年までに30%を保全する目標に届いていない。
一方で、移行の勢いを示す証拠は経済の土台のなかにあるとも指摘する。国際エネルギー機関(IEA)によれば、2025年の世界のエネルギー投資の3分の2が再生可能エネルギー、原子力、送配電網、蓄電、電化、効率化といった分野に向けられ、石油・ガス・石炭は3分の1だった。報告書は、資金の向かう先を見れば、エネルギー移行を支えているのが公約だけではなく経済性・技術・戦略でもあることが分かるとみる。
中期の加速要因は「事業上の根拠」と技術コストの低下
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