観光

新型コロナのパンデミックからの復帰に伴い、日本の国内観光とインバウンド観光が回復し、新たな高みに達した。日本政府観光局(JNTO)によると、3月の推定訪日外国人旅行者数は308万人に急増し、2019年同月比で11.6%増と顕著な伸びを示し、1964年の記録開始以来、月間最高を記録した。

しかし、観光客の増加が地域経済を活性化させる一方で、差し迫った懸念も再燃している。結果として生じるオーバーツーリズム(過剰観光)は、地域住民の日常生活に害を及ぼすだけでなく、観光が依存する環境資源にも多大なストレスを与え、観光が日本経済にとってますます不可欠な要素となる中で、サステナビリティに関する重要な問題を提起している。そんな中、持続可能な観光、すなわち「サステナブル・ツーリズム」が注目されている。

持続可能な観光-それは本当に可能なのか?

世界観光機関(WTO)は、サステナブル・ツーリズムを「現在および将来の経済的、社会的、環境的影響を十分に考慮し、観光客、観光産業、環境、受入コミュニティのニーズに対応する観光」と定義している。*1

さらに、持サステナブル・ツーリズムと言えるのは「観光開発の環境的、経済的、社会文化的側面を指し、長期的な持続可能性を保証するためには、これら3つの側面の間で適切なバランスが確立されていなければならない」としている。

概念として、持続可能な観光とは、観光がもたらすすべての影響(プラスもマイナスも)を認めるという願望である。その目的は、マイナスの影響を最小限に抑え、プラスの影響を最大化することである。

観光地に与えるマイナスの影響には、経済的な流出(影響を受けた地域外への利益の流出)、自然環境の破壊、過密化(住民の日常生活に支障をきたす)などがある。

一方、観光地にとってプラスとなる影響には、雇用創出、文化遺産の保護と解説、野生生物の保護、景観の回復などがある。

マイナスの影響を認識し、プラスの影響を育む努力をするためには、多くの利害関係者の利益のバランスを取ることを目的とした前向きな計画と柔軟な対応が必要である。

世界の観光客のサステナ意識の広がり

ブッキング・ドットコムが発表した「サステイナブル・トラベル・レポート2023」によると、世界の旅行者の4分の3が、持続可能な旅行を最優先事項としており、次世代のために地球を守るための緊急行動が必要であると考えている。*2

しかし、重要な疑問が残る: 世界全体の排出量の約8%を占める旅行業界に真の変化をもたらすには、この好意をどのように行動に移せばよいのだろうか。

したがって、観光産業における気候変動対策を加速させることは、観光産業の回復力にとって最も重要である。廃棄物の発生、水質汚染、土壌浸食、天然資源の枯渇、観光地周辺のインフラへの負担なども同時に対応していかなければならない。

日本の先進事例

「旅を通じて持続可能な社会をつくる」をモットーに、「sustabi(サスタビ)」のような新しい情報プラットフォームは、環境と地域文化の両方を大切にしたいと考える観光客の増加に対応している。

「サステナブルな旅」とは、「旅を通じて持続可能な社会をつくる旅」という。*3

サスタビのプラットフォームは、環境に優しいだけでなく、地域社会に深く根付き、コミュニティの向上に尽力する小規模ビジネスを支援する、より持続可能な旅行アプローチを採用するよう旅行者を教育する必要性を認識して開始された。

そのため、sustabiは持続可能な旅行のための実践的なヒントとなる20のガイドラインを提供し、公共交通機関の利用、再利用可能なバッグの使用、有名な観光地にとどまるのではなく、あまり知られていない観光スポットを探索するなどの行動を提唱している。さらに、これらのガイドラインに沿った日本国内の宿泊施設、レストラン、アクティビティを紹介し、ユーザーが持続可能な旅行体験を追求する手助けをする。

sustabiのプラットフォームでは、地域コミュニティを尊重したエココンシャスな旅行を促進するため、地域の事業主、旅行者、サスタビのチームメンバーからの情報やレポートを集約し、ユーザーは場所や目的に応じて簡単に情報を検索することができる。

旅行の趣味やスタイルが多様化している現在、旅行会社やホテルだけでなく、地域コミュニティの代表者、企業、農家、アーティスト、NPOなど、観光関係者のパラダイムシフトを促進する必要があることの認識の上、新たな観光エコシステムの構築にも貢献している。

意識を変え、行動を変える

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2024/5/12

サステナブル・ツーリズムの可能性

新型コロナのパンデミックからの復帰に伴い、日本の国内観光とインバウンド観光が回復し、新たな高みに達した。日本政府観光局(JNTO)によると、3月の推定訪日外国人旅行者数は308万人に急増し、2019年同月比で11.6%増と顕著な伸びを示し、1964年の記録開始以来、月間最高を記録した。 しかし、観光客の増加が地域経済を活性化させる一方で、差し迫った懸念も再燃している。結果として生じるオーバーツーリズム(過剰観光)は、地域住民の日常生活に害を及ぼすだけでなく、観光が依存する環境資源にも多大なストレスを与え、 ...

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