環境経営
自然は経済活動を支える基盤資本である。企業の事業継続性や収益構造は、生態系サービスという見えにくいインフラに支えられている。
環境・エネルギー課題に特化したシンクタンクZero Carbon Analyticsの最新の調査*1を参考に、本記事では、自然の破壊が企業にもたらす財務リスクの構造と規模を整理する。
世界経済の約55%が自然に依存する現実を踏まえ、水・気候・生物多様性の劣化が企業収益やサプライチェーンにどのように波及するかを明らかにする。あわせて、将来予測される損失規模を示し、自然保全を経済合理性の観点から再評価する必要性を提示する。
企業収益を脅かす自然関連リスクの構造
企業は本質的に自然に依存しており、自然は世界の経済活動の半分以上を支えている。生物多様性および自然の喪失は企業にとって重大な財務リスクであり、特に複数の生態系サービスに依存する企業では、サプライチェーンの混乱、調達コストの増加によって利益率の低下、最終製品への価格転換と波及する影響が生じる。
企業の自然関連リスクの中心は、水および気候への依存である。食品、飲料、医薬品産業は、最も多くの生態系サービスに重大に依存している。自然の劣化による財務損失はすでに顕在化しており、今後さらに拡大する見込みである。
例えば、鉱業および発電分野では、今後5年間で利益の25 %が失われる可能性がある。売上高10億米ドル(約1,530億円)以上の企業のうち、最もリスクが高い上位10社のうち6社は、建設、住宅、インフラ分野に属する。
自然への投資および保護は、企業と社会の機能を維持するために不可欠であり、将来の損失回避のために投資家および企業の優先事項として浮上している。
自然が経済にもたらす価値
自然は世界経済に対し、年間世界の国内総生産(GDP)の2倍に匹敵する約150 兆米ドル(約2.3京円)の価値を提供していると推定される*2。
研究によれば、世界GDPの55 %、すなわち2023年時点で約58 兆米ドル(約8,900兆円)が、自然およびそのサービスに中程度または高度に依存している。経済と自然生態系は密接に結び付いているにもかかわらず、企業はしばしば自然を過小評価する形で事業を行い、生態系の劣化を招いている。
2023年、企業は自然を損なう活動に約7.3 兆米ドル(約1,120兆円)を投資し、自然に基づく解決策への約2200億米ドル(約34兆円)の投資の30倍に相当した。国連環境計画によれば、自然に基づく解決策への投資は2030年までに2.5倍に拡大する必要がある。
水・洪水制御・気候依存が企業リスクを支配する
2025年に公表された欧州コーポレート・ガバナンス研究所(ECGI)のワーキングペーパーは、水関連の生態系サービスが企業にとって最大の財務リスクであることを示している。ECGIは、企業統治や金融市場に関する実証研究を行う欧州拠点の学術研究機関であり、政策立案者や投資家に対してエビデンスに基づく知見を提供している。
同研究所のワーキングペーパーは、査読前段階の研究成果を迅速に公表する形式を採っており、企業経営と金融システムに影響を及ぼす構造的リスクの分析を目的としている。*2
自然へ依存度の高いセクター
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