環境経営

9月末に閉幕したクライメート・ウイークNYCは、毎年開催される国連気候変動会議に続く、世界のビジネスリーダーや専門家が脱炭素社会の実現に向けたソリューションを話し合う世界最大級のイベントである。

5日間で400のセッションがNYC内で開催された。企業、大学、国際機関などが主催したイベントでは、議論の中心となった5つの共通のトピックスが共有され、それらの議論を本記事でピックアップする。

5つの主要テーマ

  1. 生成AI+テクノロジー
  2. カーボン・データと金融
  3. 透明性
  4. ガバナンス
  5. パートナーシップ

1. 生成AIは気候変動対策を推進し、サステナビリティ・データ・ギャップを埋める

データとテクノロジーに関する議論の中心は、気候変動対策とコンプライアンスに必要なデータを分析する生成AI(ジェネレーティブAI)の力であった。テクノロジーの進化に伴い、新興企業や大手ハイテク企業が開発するソリューションも進化している。ここ数カ月、ChatGPTが以前は不可能だった方法で情報へのアクセスを可能にしている。同様に、気候変動対策のためのジェネレーティブAIは、排出データへのアクセスを拡大させる革命的なものになるだろう。

グーグルマップ上の環境APIや、80カ国に洪水予測機能を提供する新しい「Flood Hub」プラットフォームなど、グーグルクラウドのAIを活用した企業や都市向けの気候ソリューションが紹介された。イケアとWinnowのパートナーシップもその一例で、両社はAIソリューションを活用し、キッチン・スタッフが廃棄のパターンを特定し、食品廃棄を最小限に抑えるための情報に基づいた意思決定を行えるようにした。この戦略的パートナーシップにより、イケアは店舗での食品廃棄を54%削減することができ、2030年までに食品ロスと廃棄を半減するというSDGs目標を達成した最初の大企業となった。

正確なデータを持つことは、信頼と誠実さ、社内の意思決定、急速に台頭する気候変動情報開示規制へのコンプライアンスにとって極めて重要である。グローバルなサプライチェーンを持つ大企業にとって、粒度の細かいデータにアクセスすることは大きな課題であったが、ジェネレーティブAIはサステナビリティ・データ・ギャップの解消に貢献している。

2.カーボンデータと金融: 金融とESGの役割の融合

ESG規制の進化により、統合報告の必要性が高まり、企業は財務会計の厳密さを反映した高度な炭素会計システムを必要としている。炭素が通貨のように扱われ、価格付けされ、課税されるようになった今、最高財務責任者(CFO)とチーフ・サステナビリティ・オフィサー(CSO)の役割は自然に収斂していくだろう。

企業は、

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