気候変動

サイエンス・ベースト・ターゲット・イニシアティブ(SBTi)は今週18日、待望のネット・ゼロ基準の更新案を発表した。この基準案は、2025年6月1日までパブリック・コンサルテーションが行われ、2026年に最終決定される予定である。*1

企業は2027年にネットゼロ基準のバージョン2(V2)の使用を開始できる。それまでの間、企業は既存の基準で目標を設定することができ、5年間または2030年末までのいずれか早いほうの期間、V2基準を使用することができる。既存のルール上ネットゼロの目標設定を目指すことを公表してから24ヶ月以内に具体的な目標を設定する必要があり、期限内に策定していないことを理由に昨年複数社が公式ウェブサイトから削除された実績もあり、今回の更新版に完全に移行するまでの適用期間が緩やかになっているように見える。

SBTiは、企業の温室効果ガス排出削減目標のゴールドスタンダードとみなされている。最近、SBTiに取り組む企業が1万社に達し、そのうち3,000社がネット・ゼロ目標を掲げているか、目標を設定することを表明している。その圧倒的な地位により、ネット・ゼロ基準の更新は、企業による世界的な排出量削減に大きな影響を与えるだろう。

カーボンオフセットの利用は容認されるか?

今週の発表は、ネット・ゼロ目標を達成するためのカーボン・オフセットの利用をめぐって昨年勃発した論争を鎮める一助となる。カーボンオフセットに関するSBTiの公式見解に大きな変更はない。企業の事業活動やバリューチェーンにおける迅速かつ大幅な排出削減を最優先する必要がある。一方、残留排出量(可能なすべての削減対策を実施した後、ネットゼロ目標年に残留する排出量)を削減するための炭素除去や関連する炭素クレジットへの投資の必要性を認めている。

改訂草案では、原案よりもさらに踏み込んで、短中期的な炭素除去目標の設定を推奨している。つまり、企業のネット・ゼロ目標達成時に、企業の基準年排出量の10%未満と見積もられる炭素除去量を、漸進的に増加させるための短期的な対策である。*1

バリューチェーン排出を超えて〜 継続的な排出量への対応

基準案では、継続的な排出量に対応するためのオプションも示している。これには、ビヨンド・バリュー・チェーン・ミティゲーション(BVCM)に投資している企業、つまり、バリューチェーンを超えた排出削減活動に資金を動員し、ネット・ゼロへの移行期に排出される排出量に責任を持って対応する企業を正式に評価することを検討することが含まれる。例えば、以下のような取り組みが考えられる:

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