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サステナブルファイナンス有識者会議、最終報告書を公表

 金融庁が18日に「サステナブルファイナンス有識者会議報告書」を公表した。サステナブルファイナンス有識者会議とは、持続可能な社会を支える金融システムの構築に向けた諸施策について検討を行うために、座長・水口剛(高崎経済大学学長)を中心に、16名のメンバーで行われている会議だ。当会議でサステナビリティを巡る議論を進めるにあたっては、広く環境・社会課題を対象としているが、当面で最も喫緊・重要な課題である気候変動を中心に据えている点が特徴だ。

 当会議の総論として、「サステナブルファイナンスは、持続可能な経済社会システムを支えるインフラ。民間セクターが主体的に取り組むとともに、政策的にも推進すべき」という基本視点と、以下の横断的論点が提示された。

①ESG要素を考慮することは、受託者責任を果たす上で望ましい対応。
インパクトファイナンスの普及・実践 に向け、多様なアイディアを実装して いくことが望ましい。
タクソノミー(持続可能な経済活動と投資を分類する枠組み)に関する国際的議論への参画、トランジション・ファイナンス の推進(分野別ロードマップの策定等)が重要。

 報告書の第2章では、「企業開示の充実」の重要性が述べられた。特に、投資家・金融機関との建設的な対話に資する、サステナビリティ情報に関する適切な企業開示のあり方について幅広く検討を行うことが適当とされている。サステナビリティの面では、比較可能で整合性のとれたサステナビリティ報告基準の策定に向け、日本として、IFRS財団(国際会計基準審議会)における基準策定に積極的に参画すべきとされている。また、気候変動の面では、コーポレートガバナンス・コードの改訂(2021年6月)を踏まえTCFD等に基づく気候変動に関連した情報開示の質と量の充実を促すと共に、国際的な動向を注視しながら検討を継続的に進めていくことが重要とした。英国、ニュージーランド、フランスなどが気候関連開示の義務化に踏み切っている中、有識者はコンプライ・オア・エクスプレイン(遵守せよ、さもなくば、説明せよ)の枠組みであるコーポレートガバナンス・ コードに明記されたことでより強靭な対応や制度の必要性については触れなかった。

 報告書第3章の市場機能の発揮では、「グリーン国際金融センター」の実現により、世界・アジアにおける持続可能な社会の構築に向けた投融資の活性化に貢献。また、市場の主要プレイヤーが、期待される役割を適切に果たすことが必要であるとまとめられた。また、「個人に対する投資機会の提供」の部分では、「顧客保護の観点から、ESG関連投資信託の組成や販売に当たって商品特性を顧客に丁寧に説明するとともに、その後の選定銘柄の状況を継続的に説明すべき」と強調された。というのは、人気を集めているESG関連投資信託だが、どのような基準に基づき「ESG」や「SDGs」という名称を付すかについては、現在各社の裁量に委ねられており、ESG関連投資信託の銘柄選定基準は、個々の運用会社や商品によって異なっているからだ。また、一般的に、ESGの取組みに対する評価方法や具体的なESGスコアの算出基準は、目論見書等の顧客向けの資料において説明されていないことが多い。したがって、有識者の報告書ではESG関連投資信託のグリーンウオッシイングへの対策として以下のように指摘する

「とりわけ、投資信託に 「ESG」や「SDGs」等の名称をつける場合には、顧客がその名称の趣旨を誤認することのないよう、その商品が当該名称の示唆する特性をどのように満たしているかを、可能な限り 指標等も用いて明確に説明すべきである。」

 さらに、金融庁において、資産運用業界におけるESGやSDGsのあり方について、「資産運用業者等に対するモニタリングを進めることが重要。」とされた。ESG関連プラットフォームの面からは、諸外国における取引所の取組み例を踏まえ、グリーンボンド等に関する実務上有益な情報が得られる環境整備や、ESG関連債の適格性を客観的に認証する枠組みの構築の必要性が述べられた。

 報告書の第4章、金融機関の投融資先支援とリスク管理では、金融機関が、サステナビリティに関する機会とリスクの視点をビジネス戦略やリスク管理に織り込み、実体経済の移行を支えることが重要とまとめた。

 今後、さらなるサステナブルファイナンスの推進に向けて、金融庁をはじめとした関係省庁、市場関係者、金融機関、産業界、学界、NGO等が連携し、本報告書に盛り込まれた提言内容を踏まえ、横断的かつ継続的に議論し、さらなる実践に繋げていくことに強く期待したい。


参考リンク
金融庁:https://www.fsa.go.jp/news/r2/singi/20210618-2.html

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