欧州での地上戦、景気後退の脅威、グローバリゼーションからの一部脱却などを背景に、スイスの山間の町ダボスで開催されていた世界経済フォーラムの年次総会が1月20日に閉幕した。
今年の「ダボス会議」は、政府、企業、市民社会から過去最多のリーダーが参加し、史上最大規模となった。ダボスでは、どのようなトピックスが話題となったのだろうか。コンサルティング大手のマッキンゼー・アンド・カンパニーは、議論の中から5つの重要なポイントを取り上げた。
- グローバルな混乱は収束していない。企業は、明日に備えるために、今のうち、レジリエンスの力を構築することを優先させなければならない。
- どの地域も島ではない。グローバル化の未来には、デカップリングではなく、多様化が必要だ。
- ネットゼロの未来を実現するために、リーダーはエネルギー転換とエネルギー回復力のバランスを取る必要がある。
- グローバル企業は、インクルージョンが未開拓の市場を開拓し、競争力を高めることに役立っていることを認識している。
- 芽生えつつある宇宙経済は、世界を変える大きな可能性を秘めている。多くのセクターが宇宙のイノベーションを取り込むことができる。
希望の光
多くの経済学者が2023年の景気後退リスクを予測し、地政学的緊張が世界経済を形成し続けると見ている一方で、ダボス会議では、より持続可能で強靭な世界の基礎を築くために、進行中の経済、エネルギー、気候変動、食糧危機に対処する50以上の国際イニシアチブが発表され、希望の光が見えてきた。
注目すべき取り組みのいくつかを以下に要約する。
ウクライナのゼレンスキー大統領はキエフからバーチャルで参加者に語りかけ、戦争終結に向けたウクライナの10項目の提案(敵対行為の停止、ロシアとの国境の回復、すべての囚人と追放者の解放、食糧とエネルギーの安全保障、正義の保証)を支持するよう世界の指導者に促した。
世界のリーダーは次々とウクライナとの連帯を表明した。
ドイツのショルツ首相は、自国が「必要な限り」ウクライナを支援し続けることを表明した。
また、戦争にもかかわらず、地域のエネルギー危機が経済に与える影響を抑える努力のおかげで、欧州最大の経済大国は今年の景気後退を避けるだろうと述べ、気候中立の達成というドイツの目標を再確認した。
中国が世界に門戸を再び開く
中国の劉鶴副首相は、3年間のパンデミック隔離を経て、世界への開放を宣言し、国際協力、経済の安定と再グローバル化を強調した。劉副首相は、自由化の継続と中国の不動産業に対する規制緩和を確約した。また、2030年までに炭素排出量のピークを達成し、2060年までにカーボンニュートラルを達成するという中国の2つの目標を再確認した。
欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長は、欧州をクリーンテックとイノベーションの本拠地にするための「グリーンディール産業計画」の実行に向けた政策を強調した。欧州のグリーン経済戦略は、スピードとアクセスを提供する規制環境、クリーンテクノロジー生産のための資金調達、スキルアップ、貿易の促進という4つの柱を軸に構成されているという。
協力が主要テーマ
協力はよりバーチャルになりつつあり、フォーラムのグローバル・コラボレーション・ビレッジでは、メタバースのようなバーチャル環境を、いかに包括的で効果的な国際的行動に活用できるかを示した。人工知能の黄金期が進行する中、テクノロジーは人々を結びつける方法をより多く提供するIT・テックの可能性にも大きな期待が寄せられている。
「コラボレーション、イノベーション、人間の善意と創意工夫の力によって、私たちは課題をチャンスに変える能力を持っています。これこそ、相互尊重と協力によって問題を解決する精神です。」
世界経済フォーラムの創設者兼会長、クラウス・シュワブ氏
危機が収束するにつれ、解決策もまた収束しなければならない。
ダボス会議では、大きなシステム上の課題を横断するつながりが重視された。480以上のセッションが行われ、350人以上の公人、47人の首脳を含む2,700人以上のリーダーが、世界の最も差し迫った課題に取り組むために年次総会に集結した。
フォーラムでは、気候変動と貿易、循環型経済、グリーン産業、製造業の再編に焦点を当てた主要なイニシアチブが目立った。
ネット・ゼロを目指す産業クラスター
中国、インドネシア、日本、スペイン、米国を拠点とする9つの主要産業クラスターが、産業界のGHG排出量削減を支援する「産業クラスターのネットゼロ移行イニシアティブ」(英:Transitioning Industrial Clusters towards Net Zero)イニシアチブに参加した。川崎市の「川崎カーボンニュートラルコンビナート(英語表記:Kawasaki Carbon Neutral Industrial Complex)」が、日本で初めて参画を発表した。この取組は、世界経済フォーラムにより設立・運営されており、世界的な課題であるカーボンニュートラルの実現に向け、重要な役割を担う産業クラスターについて、国際的なクラスター間のノウハウ・知見を共有し、協業によるカーボンニュートラルを目指すもの。これまで世界各国の産業クラスターが参画し、会議による情報交換や連携しての情報発信が行われる。
グローバル・バッテリー・アライアンス
ここから先は「ThinkESG プレミアム」会員限定の
コンテンツです。
4つの特典が受けられる「ThinkESG プレミアム会員(1ヶ月定期購読)」の詳細についてはこちらをご覧ください。
「ThinkESG プレミアム会員(1ヶ月定期購読)」へはこちらからお申し込みいただけます。