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炭素排出の真の代償、1トンあたり10万ドル

GX-ETS(国内排出量取引制度)における排出量取引の二酸化炭素1トンあたりの価格は、現時点では政府が上限と下限の価格を定める方針であり、具体的な価格はまだ決定していない。しかし、EUの排出量取引制度(EU-ETS)の価格は、1トンあたり約72ユーロ(約1万1700円)程度で推移しており、今後の取引価格の水準が注目されている。

一方で、シカゴ大学の研究によれば、炭素1トンの排出による「最終的なコスト」は約1450万円(10万米ドル)に達する可能性がある。EUの炭素価格と同等レベルの従来の社会的炭素コストと言われていた約1万4500円(100ドル)とは大きく異なる結果となっている。

目次

長期的視点から見る気候変動の影響

気候変動は、現代を生きる私たちの世代だけでなく、数千年先の未来まで続く深刻な問題である。シカゴ大学の研究チームが発表した最新の論文によれば、炭素1トンを排出することによる「最終的なコスト」は、なんと10万ドルにものぼると推定されている。これは、現在の経済学的な評価である1トンあたり約1万4500円(100ドル)程度という数字の実に1,000倍に相当する。*1

通常の経済モデルでは、未来のコストは「割引率」という考え方に基づき、遠い将来の負担は小さく評価されがちである。また、経済学者は、二酸化炭素を大気中に放出することの社会的コストを推定しようと頻繁に試みていますが、その予測のほとんどは2100年を超えていない。しかし、気候変動の影響は、氷床の溶解や海面上昇のように、数千年単位で進行するものが多い。つまり、今排出している炭素の影響は、私たちの子孫、さらにその先の未来の人類にまで及び続けるのである。

炭素排出の「真の代償」とは

この研究では、地質学者と哲学者が協力し、数十万年先までの地球環境の変化をモデル化した。その結果、

氷床の融解による最終的な海面上昇は約49メートルに達し、食糧生産の減少は人口や経済規模にも大きな打撃を与えることが示された。また、経済成長がないという前提のもと、時間を無限に延ばした場合の累積的な損害を算出したところ、炭素1トンあたりのコストは最低約145万円(1万ドル)から最大約1億875万円(75万ドル)に及び、その中心値として約1,450万円(10万ドル)という驚くべき数字が導き出された。

研究チームは、この推計が正確な経済モデルとしての「解答」を示すものではなく、むしろ「未来のイメージを可視化する」ための試みであると強調している。つまり、今の私たちが排出している炭素が、将来の世代にどれほどの負担を残すのかを、より直感的に理解するための「警鐘」として位置づけられている。

「後戻りできない問題」への危機感を持つべき時

現代社会は、オゾン層の回復や一部の環境問題の改善を目の当たりにしてきた。しかし、気候変動はそれらとは根本的に異なる問題である。たとえば、水銀汚染は1万年にわたり寿司を汚染し続ける可能性があるし、気候変動はさらにそれ以上のスケールで人類に影響を与え続ける。

「汚染をやめても自然に元に戻らない問題こそ、最も恐ろしいものだ」と、研究の中心人物であるアーチャー教授は語る。私たちは今、この問題にどれだけの責任を持つべきなのか、そして将来の世代にどのような負担を残してしまうのか、真剣に考える必要がある。

まとめ

シカゴ大学の研究が示した「炭素1トンあたり10万ドル」という試算は、これまでの常識を覆す衝撃的なものである。気候変動は単なる「未来の問題」ではなく、数千年にわたって人類に影響を与え続ける「責任の連鎖」だ。私たちは今、これまで以上に長期的な視野を持ち、行動を起こす必要がある。

*1 https://news.uchicago.edu/story/climate-change-will-ultimately-cost-humanity-100000-ton-carbon-scientists-estimate

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