アジア
世界的な経営コンサルティング会社ベイン・アンド・カンパニーやシンガポールの政府系投資会社テマセクとその脱炭素投資に特化した戦略子会社ジェンゼロ(GenZero)、英銀行グループスタンダード・チャータードによって、「東南アジアのグリーン経済2024」という新たなレポートが発行された。*1
同レポートによれば、東南アジアは、脱炭素社会の実現と持続可能な経済発展を両立させるために、グリーントランジションがもたらす絶好の機会をつかむことが重要だ。脱炭素化に資する実行可能で投資可能なビジネス機会を拡大することで、2030年までに約50兆円の新たな収益源を確保することができる。
レポートでは、脱炭素を加速することができる即時の投資可能な脱炭素化のアイデアとその進展のために、自然と農業、電力、交通、建物という4つのセクター別のテーマを包括的に深堀し、上位13の投資可能なアイデアを紹介する。最後に、短期間でエコシステムを構築し、大規模な投資を実現するための主要なアクセラレーターを特定する。
経済成長とエネルギー転換の両立
東南アジアは、温室効果ガス排出量ネットゼロの野望とエネルギーのグリーン転換の真の進展との間にある現実のギャップに直面している。この地域は、経済成長とエネルギー転換の両立という二重の課題、再生可能エネルギーの地理的分散による需給のミスマッチ、炭素削減への限られたインセンティブ、資金調達への不十分なアクセスなど、構造的な制約が多く残っている。これらの課題には、グリーン転換を加速させるための多面的なシステムレベルの変革が必要である。ネットゼロに向けたトランジションの実現のために2030年まで1.5兆ドル(約225兆円)が必要と推定されるが、2021年以降、グリーン投資に特化した投資額は東南アジア全体で450億ドル(約6兆7,500億円)に過ぎない。
しかし、東南アジア諸国には、脱炭素化だけでなく、競争力と経済成長のために今後の移行を活用する明確な機会がある。投資のアイデアとして、環境に優しい燃料源・プロセスの最適化・農業慣行の改善・自然を基盤とする課題解決・環境に優しい輸送・エネルギー効率が高い建物を挙げており、それをさらに加速させるものとして、政策とインセンティブ・画期的な金融メカニズム・民間企業投資・クラスター/パイロット開発・地域連携が挙げられた。
削減効果と展開可能性
長期的なインパクトが重要である一方、東南アジア諸国は、短期的なインパクトと即時の排出削減を実現できる投資を優先すべきである。そのために、バリューチェーン全体において、定常状態で年間100 MtCO2以上の炭素排出量を削減できる高い効果があること、そして、技術的に実現可能で、市場準備が整っており、今後12ヶ月以内に即時排出量削減が可能であるアイデアを優先的に採用することが示唆された。
投資可能な約100個の脱炭素化アイデアに優先度をつけるために、削減効果と展開可能性を鑑みた、Step1から4の段階的な基準が採用された。
- Step1:SEAの脱炭素化の機会を特定し、優先順位をつける
- Step2:優先順位付けされた6つの機会領域における投資可能なアイデアのロングリストを作成し、94のアイデアを入力する。
- Step3:削減ポテンシャルと展開可能性の評価と定量化
- Step4:インパクトが大きく、展開可能性の高いアイデアに優先順位をつける
優先順位をつけて具体的な実施を促す
その結果、16のショートリストが完成し、その中からさらに優先順位の高い上位13の投資可能なアイデアを導き出した。
- データセンターのエネルギー効率改善
- ビルのエネルギー効率改善
- 実用規模の太陽光発電と風力発電
- 環境再生型農業の実践
- 節水型稲作(AWD)
- 送配電(T&D)インフラの拡大
- キャプティブ・ソーラー
- 精密農業の実践
- VPPAと二国間系統連系
- 電気自動車と充電インフラ
- 森林保護
- バイオ燃料製造のための廃棄物利用泥炭地の保全
- 船舶用低炭素移行燃料
- 移行期における「亜臨界圧」石炭プラントの最適化
- マングローブの再生
※縦軸が削減可能量、横軸が実現可能性。
トップ5の優先的投資アイデア
これらのアイデアは建物、電力、自然と農業、交通という4つのセクターに分類分けされて考察された。投資可能な13のアイデアすべてが2030年までに東南アジア諸国で実施された場合の追加的な収益源は約24兆円(1500億ドル)に上ると予測されている。ここでは特に優先度の高い5つのアイデアを詳しく紹介する。
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