世界気象機関、今後5年間の気温は記録的な高温で推移
世界気象機関(WMO)の最新の気候予測によると、世界の平均気温は今後5年間、記録的なレベルかそれに近い状態が続くと予想される*1。WMOは温暖化に伴う気候リスクは社会、経済、持続可能な開発への影響を増大させると警鐘を鳴らしている。 2024年は、世界の地表面付近気温が1850~1900年平均を1.55±0.13℃上回り、175年間の観測記録の中で最も暖かい年になったとWMOが3月に報告されているばかりだ。今回の調査報告書で、気候変動の痕跡がさらに浮き彫りになる。 WMOによる主な予測 今後5年間のうち少な ...
石炭火力の早期廃止を促すトランジション・クレジット
世界最大のカーボンクレジット認証機関であるヴェラ(英:Verra)は、石炭火力発電所の早期廃止と再生可能エネルギーへの代替を可能にするプロジェクトからカーボンクレジットを発行する新たな方法論を5月上旬に承認した。*1 注目を集めるトランジション・クレジット これは、世界的なエネルギー転換における重要なボトルネックのひとつである石炭火力の段階的廃止に取り組むための待望の方法論である。特に、開発途上国の石炭火力発電所には通常数十年の運転寿命が残されているため、これらのアセットを予定より早く廃止させるにはコスト ...
シンガポール政府投資公社、気候変動適応への投資機会に着目
気候変動適応は避けられないニーズであり、また投資機会でもある。気候変動による物理的影響が深刻化する中で、気候変動適応は脱炭素化と並び立つ、重要かつ補完的な投資テーマとして台頭している。本記事では、気候変動の物理的影響に対応する「気候変動適応(climate adaptation)」への投資が、今後どのような規模で拡大し、どのような資本の動員が必要となるかについて、シンガポール政府投資公社による最新の調査を基に詳しく解説する。 気候変動適応が浮上する新たな投資テーマ 気候変動による物理的影響が深刻化する中で ...
英国政府、カーボンクレジット使用原則について意見募集
英国政府は、カーボンクレジットの使用に関する新たな原則とガイドラインを提案し、意見募集を開始した。本記事では、英国政府の方針を中心に、企業の脱炭素への取り組みを評価する最新動向を詳しく紹介する。 英国政府、カーボンクレジット使用に関する6つの原則を提案 英国政府は、企業やその他の組織がカーボンクレジットを利用して気候変動戦略を推進する方法に関する原則とガイドラインの意見募集を4月17日に開始した。*1 昨年11月、政府は企業によるカーボンおよびネイチャークレジットの活用に「明確で適切な役割」があると認めた ...
ウォール街、脱炭素化の後退で+3℃の世界を想定
ウォール街の大手金融機関は、190カ国以上が合意した気温上昇の上限を大幅に超える、深刻な地球温暖化の未来を既成事実として捉えつつある。各社はこれに備え、気候変動によるリスクとチャンスの両面を見据えたビジネス戦略を構築している。 パリ協定を超える気温上昇を織り込む金融業界 業界関係者向けの文書から明らかになったのは、ウォール街の大手金融機関が、2015年に190カ国以上が合意したパリ協定が定める世界の平均気温の上昇を産業革命前と比較して、2℃より十分低く抑え、1.5℃度に抑制する努力を追求する目標を大きく超 ...
反DEI運動に対する株主の拒絶
2025年2月26日、ジョン・ディア(Deere & Co)の年次総会において、株主の98.7%が反多様性提案を否決した。これに先立ち、1月23日のコストコ(Costco)では98%、2月25日のアップル(Apple)では97.7%が同様の提案に反対している。これらの議決権行使結果は、企業の多様性・公平性・包括性(DEI)方針に対する市場の支持を示すものとなった。*1 反DEI運動の流れ 近年、米国ではDEIに対する批判が強まっており、特に保守派の政治家やシンクタンクが「逆差別」や「政治的偏向」と ...
SBTIがネットゼロ基準2.0を発表
サイエンス・ベースト・ターゲット・イニシアティブ(SBTi)は今週18日、待望のネット・ゼロ基準の更新案を発表した。この基準案は、2025年6月1日までパブリック・コンサルテーションが行われ、2026年に最終決定される予定である。*1 企業は2027年にネットゼロ基準のバージョン2(V2)の使用を開始できる。それまでの間、企業は既存の基準で目標を設定することができ、5年間または2030年末までのいずれか早いほうの期間、V2基準を使用することができる。既存のルール上ネットゼロの目標設定を目指すことを公表して ...
ブラックロックの転換?〜自然資本市場とESG投資の新時代〜
世界最大の資産運用会社であるブラックロックが、自然資本を「外部性」ではなく「投資可能な資産」として正式に位置付けた。これは、資産評価のパラダイムシフトを示す重要な転換点であり、ESG投資の未来を再定義する可能性がある。*1 ブラックロックはこれまで、環境・社会・ガバナンス(ESG)に配慮した投資を推進してきたが、近年は「ESG」というラベルに対する市場の過敏な反応を受け、表立ったESG戦略から距離を置く動きを見せている。しかし、本質的な方向性は変わっていない。むしろ、長期的な財務レジリエンス(回復力)の確 ...
トランプ政権が欧州のESG指令を脅かす
トランプ米大統領とその支持者が、連邦政府機関によるDEI (ダイバーシティ:多様性、エクイティ:公平性、Inclusion: 包括性)イニシアチブの禁止や、投資家がESG関連問題に関して企業と関わる権利の制限など、アンチESGの主張を迅速に行動に移していることは明らかになっている。この動きは米国内にとどまらない。 2月12日、トランプ大統領が米国商務長官に指名したハワード・ルトニック氏は、米国上院の公聴会で、企業サステナビリティ・デュー・ディリジェンス指令(CSDDD)は米国企業に「大きな負担」を強いるも ...
2024年、世界のエネルギー転換投資が初めて300兆円を超える
調査機関ブルームバーグ・ニューエネルギー・ファイナンス(BNEF)の最新の報告書によると、2024年のエネルギー転換への世界投資は過去最高の2.1兆ドル(約315兆円)に達し、前年比11%増加した。 中国本土が再び成長の牽引役となり、世界全体の増加分の3分の2を占めた。成長に貢献したのは、昨年、エネルギー貯蔵投資とともに過去最高を記録した電動輸送、再生可能エネルギー、そして電力網の増強だ。 エネルギー転換技術への投資全体は過去最高を記録したが、成長のペースは、投資が年間24~29%増加した過去3年間よりも ...