国連

11月10日からブラジル・ベレンで開催される国連気候変動会議COP30まであと数週間となり、各国は2035年までの新たな気候変動対策目標の提出を急いでいる。

しかし、それらは壊滅的な気候変動を防ぐのに十分になるだろうか?日本以外の主要国の現状の国別目標の提出状況や進展について、本記事でピックアップする。

「これ以上の危機はない」と国連高官はニューヨークでの国連気候サミットを前に記者団に語った。過去数ヶ月の夏だけで、大規模な洪水、干ばつ、長期化する熱波など、数々の異常気象が各地の人々を襲った。気候災害は「あらゆる大陸で大混乱を引き起こしている」と同高官は付け加えた。科学者らは、人為的な地球温暖化が地球気候の変化を加速させており、気温上昇が長期的により深刻な影響をもたらすと指摘する。

気候危機に対処するため、世界の指導者たちは産業革命前に比べて地球の平均気温上昇を2℃を大幅に下回る水準に抑え、1.5℃に抑える努力を追求することで合意した。この合意は2015年のパリ協定の下で締結され、各国は5年ごとに「NDC(国別貢献目標)」と呼ばれる形で約束を更新・公表することを約束した。

2035年NDCの提出期限は今年の2月だったが、パリ協定を批准した195カ国・地域のうち、期限を守ったのは日本を含むごく一部のみだった。日本は新たな2035年NDCを期限通り提出している。

今後数週間で各国が約束を提示するよう圧力が強まっている。*1

主要排出国が後れを取る

パリ協定を批准した195カ国のうち、9月28日時点で新たな気候目標を提出したのはわずか51カ国——これは世界の排出量のわずか26%に相当する。*2

欧州連合(EU)やインドを含む主要排出国は、まだ国家目標を提出していない。オーストラリアや日本のように国内目標を提示した国々も、より強い野心を示さず公平な分担を果たしていないと批判されている。

COP30の開催までに、多くの国がNDCを提出すると見込まれている。ニューヨークで9月末に開催された国連総会に合わせて開かれた気候アンビション・サミットでは、100カ国以上が発言した。では各国は何を約束したのか?そして地球温暖化対策にとって何を意味するのか?

欧州連合(EU):気候変動対策のリーダーか?

国境での紛争、一部加盟国の経済問題、右傾化する政治情勢などにより、27カ国からなるEUが気候危機への統一対応で合意するのは困難を極めている。

気候サミット直前にEUは、COP30議長国ブラジルが設定した9月末までのNDC提出期限に間に合わないことを示唆し、代わりに意向表明を発表した。この文書は、11月の会議までに気候目標を提示する同連合の決意を示しており、2035年までに温室効果ガスを1990年比で66.25%から72.5%削減する方針を明記した。

世界資源研究所(WRI)欧州地域ディレクター、スティエンチェ・ファン・フェルトホーフェン氏は、この声明は「進展の余地」を示す一方で、「混乱を招くメッセージを発し、投資家の信頼を損ない、雇用・エネルギー安全保障・競争力を損なうリスクがある」と指摘した。

EUの温室効果ガス排出量を2040年までに90%削減する提案は以前から検討されているが、全加盟国の合意には至っていない。専門家は、2035年目標がその目標に影響を与えると指摘する。「道筋が重要だ。EUが66.3%といった目標範囲の下限に落ち着けば、わずか5年後に90%達成を目指す最終段階は急峻な登り坂となる。これは投資家や企業が求める長期的な政策信頼性を提供しない」とファン・フェルドホーフェン氏は付け加えた。

中国:グリーンエネルギーの巨人

世界最大の排出国である中国は、温室効果ガス排出量の約3分の1を占めており、野心的な国内削減目標設定の圧力に直面している。

中国は、2035年までに温室効果ガスの純排出量をピーク時から7~10%削減することを約束し、「より良い結果を目指す」と付け加えた。

これは中国として初の総排出量に対する絶対的な上限設定ではあるものの、

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